楽天は2014年2月14日、欧州の通話アプリ・サービス会社である「バイバー・メディア」を買収すると発表しました。同社は日本でいえばLINEのような無料通話サービスを提供している会社なのですが、楽天が同社を買収する狙いはどこにあるのでしょうか?
  バイパー社は全世界に2億8000万人の登録ユーザーと1億人の月間利用者を抱えているといわれています。欧州の利用者がもっとも多いのですが、中東やア ジア、中南米など幅広い文化圏にまんべんなく展開しているのが特徴です。楽天はバイパー社の顧客基盤に対して、ECサービスやデジタル・コンテンツを売り 込んでいく戦略を立てています。楽天はすでにIP電話サービスのフュージョン・コミュニケーションを傘下に持っており、一部には格安電話 サービス「楽天でんわ」との融合を期待する向きもあるようです。もちろんこうしたシナジーが発揮される場面はありそうですが、楽天がバイバー社に期待して いるのは既存サービスとの融合というよりも、同社が持つグローバルな顧客基盤であると考えられます。

 楽天は2010年頃から世界戦略を打ち出しており、2012年には社内の公用語を英語にするなど、本格的な取り組みを進めてきました。同社が海外にこだわるのは、多くの人が認識しているように、日本市場がすでに頭打ちになっているからです。

  日本は人口が減少していますから、基本的に日本市場だけで勝負していては大きな拡大は望めません。しかし、インターネットの世界は、リアルビジネスとは異 なり、今後も急拡大が望めそうなイメージがあります。それにも関わらず、楽天が海外展開にこれほどまでにこだわる理由は、楽天ユーザーの少々特異な年齢構 成にありそうです。

 一般的にネット・サービスの利用者は若年層が中心となっています。中国最大のECサイトであるアリババの利用者は半 数以上が20代です。現在20代の人はこのまま年を取ってもネットを利用する可能性が高いですから、利用者の総数は今後もさらに拡大することが予想されま す。
 しかし楽天の利用者はこれとは少々状況が異なります。楽天会員のうち20代はわずかに27%で、何と40代以上が34%近くを占めて いるのです。つまり楽天は年齢に関係なく顧客を取り込めているわけですが、これはウラを返せば、獲得できる顧客はほぼ獲得しつくしたと解釈することもでき ます。もしそうだとすると、今後、若年層でのシェアが急激に拡大しない限り、利用者が大幅に伸びる可能性は少ないと考えることができます。

  そのような環境において従来のような急成長シナリオを維持するためには、どうしても海外展開を進める必要が出てくるというわけです。しかし、同社の海外展 開は、順風満帆であった国内の事業展開に比べるとあまり順調に進んでいるとはとはいえません。2012年には中国のサービスを閉鎖してしまいましたし、 2013年にはインドネシア企業との合弁事業を解消しています。しかし、同社が抱える成長のカギは基本的に海外にありますから、この動きは当分続く可能性 が高いでしょう。

(The Capital Tribune Japan)