2014年9月21日日曜日

その「倍返し」に異議あり 池井戸潤









 去年、「倍返し」なる言葉が流行った。
 そのブームが「半沢直樹」なる小説の主人公の口癖である。池井戸は三菱東京UFJ銀行出身の作家という。だが、私はこの作品を読みたいとは思わない。一度本屋で「ロスジェネの逆襲」を適当に立ち読みしたが中身の軽さに呆れ、「立ち読みしたいともお金を出して読みたいとも思えないな」と思ったほどである。
 そもそも、この倍返しというのはある意味危険なブームである。主人公は理不尽な振る舞いを許せないから相手に数十倍の屈辱を与える。そこにこの作品の危険性があるのである。要するに言葉の過激さで危険な本質をごまかしているのにすぎないのだ。
 そんな池井戸の作品もどきを相手にしない理由に、私は横田濱夫氏の「はみだし銀行マン」シリーズを読んできたことがある。この横田氏はペンネームから予想されるように横浜銀行出身であり、横浜銀行の凄まじいバブルへの傾斜ぶりを内部告発した為に言葉を絶するパワハラ被害を受け、不当に追い出されたほどである。その横田氏の喧嘩根性と比較しても池井戸は根性がないのである。
 要するに銀行業界御用達作家と言ってもいいのである。横田氏が過激な口調を使いながら現実を語ったのに対して池井戸はメルヘンを語っているのにすぎない。その倍返しに私は改めて異議を突き付けざるを得ない。その言葉が独り歩きし、凄まじいまでのパワハラを正当化することを意味することに対し池井戸は責任すら覚えていない。
 それでいいとは私には思えない。