2014年9月9日火曜日

北野武、その歪みを見よ

佐高信 2005年1号  

ビートたけしを辛口と持ち上げる甘口メディアが本来やるべきこと
www.logi-biz.com/pdf-data.php?id=16

2005年1月号:ロジビズ[logi-biz


 ビートたけしは 殿 から 教授 になった それも東京芸術大学教授である。  
 ますます批判する人間がいなくなるだろう。
 いや、いたとしても取り上げるメディアがどのくらいあるか。
 その中で 十二月三日付の 日刊ゲンダイがおすぎの痛烈なたけし批判を紹介している。
 おすぎは一連の たけし映画 を 週刊文春 や 週刊アサヒ芸能 のコラムで次のようにバッサリ斬ったというのである。
 九九年の 菊次郎の夏 は 哀しくなる凡作で二〇〇一年の BROTHER は 才能のカケラも見られない愚作そして 座頭市 は 映画評を 書くのも嫌になりました
 と これに激怒したたけしは 十一月二十三日に行われた映画のイベントで宣伝として金もらってそれで映画評論家だって言ってるおかしいのもいると反論したとか。王様は裸だ と言ったおすぎに
教授 が高飛車な対応をしたわけである。
 これを読んで私はかつて私がたけしを批判した時の たけしの応答を思い出した。
 私が「噂の真相」(月刊誌/廃刊)でたけしを筆刀両断 したのに対する反応だが
 まず 週刊文春 の九一年十一月二十一日号に載ったたけしの場外乱闘 の私に関する部分を引く 。

 文章書いて飯食っている連中の中で 経済評論家っていったいなんなのかね
 佐高信というのがバブル批判で売り出し中らしいけど
 ザ・ハウス・オブ・ノムラ を訳したとかい ても 外人の尻馬にのってやる仕事にどれだけの価値があるんだろう
 所詮は評論家で 終わった結果を批判的に検討してば かりでさ
 あの程度の経済評論のどこが 批判的 なんだよ
 映画評論家の力のなさとどう違うっていうの
 おまけに経済だけじゃなくて 俺についてまであれこれ言ってさ
 このどろどろしたヘドロ世界に生きるムツゴロウみたいなやつだってけなしているつもりのようだけど ヘドロの中で精一杯呼吸している生き物であることをヨシと思 ているのは俺自身なんだから
 硬派ぶった意見を アサヒ芸能 なんかに平気で書けちゃう佐高さんの感覚がわからない
 やくざ記事とソープ記事とおっぱいがデカイとかの記事の間に文章を書いている自分のほうこそ ヘドロの中で溺れている魚なんじゃねえのか

 フランス座という浅草のストリ プ劇場で漫才をやっていたたけしが おっぱいがデカイとかの記事を売るアサヒ芸能 に 私が 硬派ぶった意見 を言ったことをけなすとは思わなかった。
 それにしても たけしのまわりには 終わった結果を批判的に検討してばかりの評論家しかいないのだろう。
 ザ・ハウス・オブ・ノムラ は原著者が野村証券に訴えられ訳本がなかなか出版できなかったことなど たけしは想像もできまい。
 映画監督の山谷哲夫は たけしの映画「その男 凶暴につき」を「大塚署の刑事たちは ここではぺこぺこしやがって。何が凶暴だと嗤うだろう」と書いた。
 自分の女の問題で フライデ に殴り込みをかけたがそれも一人ではなくて軍団で 取り調べを受けて恐ろしくなり日ごろバカにしている警察に頭を下げまくって執行猶予にしてもらったのである。
 たけしは少しも 辛口 ではなく 凶暴 でもない。権力を持っている者にはぺこぺこし 弱者を嵩にかか て叩く。 そして 自分に対してもへいこらすることを要求する
 こんなたけしをメディアが 辛口 とかいうのは自分たちがよほど 甘口 になっているのだということを自覚したほうがいい。



 この佐高の言葉は北野武のゆがみを厳しく射抜いている。
 北野という男は現実社会をわかっていない男である。ただ新聞の表面だけを見て、そのニュースの背景にあるものを読み解く能力がない。『全思考』(幻冬社文庫)という無思考な本で、『若手を取り巻く環境が、どんどん手軽で薄っぺらになって、若者の思考能力は低下していく。そして若者が馬鹿になればなるほど、世の中はますます手軽で薄っぺらなものが流行るようになる』ともほざいているようだが、この暴言はどうか。

『新潮45』の2010年6月号で、原子力委員会委員長の近藤駿介(東京大名誉教授)との対談

 「おいらは大学も工学部ですから、原子力関係の話は大好きなんですよ。今日は新潟県にある柏崎刈羽原子力発電所の中を見学させてもらったのだけど、面白くて仕方がなかった」

 「原子力発電を批判するような人たちは、すぐに『もし地震が起きて原子炉が壊れたらどうなるんだ』とか言うじゃな いですか。ということは、逆に原子力発電所としては、地震が起きても大丈夫なように、他の施設以上に気を使っているはず。だから、地震が起きたら、本当は ここへ逃げるのが一番安全だったりする(笑)。でも、新しい技術に対しては『危険だ』と叫ぶ、オオカミ少年のほうがマスコミ的にはウケがいい」

 まさに薄っぺらいオトコそのものではないか。
 ふざけるなと奴の耳元で一喝したいほどの憤りだ。元相棒のビートきよしがごますり男だったことを暴露していたが、なぜかメディアは北野タブーに恐れて口をつぐんでいる。