2015年4月30日木曜日

人を育てられなかった政治を問う~地方選挙戦~


自治はどこへ:「限界集落の星」転落 29歳町議の逮捕

毎日新聞 2014年12月28日 10時29分(最終更新 12月28日 16時44分)


 被選挙権年齢下限の25歳で当選した岡山県の小さな町の議員が今年10月、詐欺容疑で逮捕された。議員の資質が疑わしい若者が、なぜ担がれたのか。地元を歩くと、高齢化で衰え、自治体合併で傷んだ地域の姿が浮かんだ。町民の一人は落胆をにじませて言った。「あいつは、限界集落の期待の星じゃった」【樋口淳也、本多健】
 ◇過疎、合併…議員育成力衰え

 大雪が降った今月18日、名古屋地裁。傍聴人もまばらな法廷で、前和気(わけ)町議の片倉弘貴被告(29)は、起訴内容の認否に「間違いありません」と消え入るような声で答えた。

 初当選から3年後の今年3月末に失踪。京都市内で10月9日、放置自転車を持ち去った疑いで逮捕された。所持金は8円。釈放後、失踪理由を「本業(イベント企画業)の借金でどうしていいか分からなかった」と周囲に説明したが、同29日に今度は詐欺容疑で愛知県警に逮捕された。

 被告の地元の旧佐伯(さえき)町は2006年3月、旧和気町と合併し消えた。自宅は林道で山奥へ分け入った丸山地区にある。一帯はツル飼育が盛んで、今も「タンチョウの里 佐伯」という看板が道端に立つ。そんなのどかな山村で昔、合併を巡る大混乱があった。

 発端は、両町の正式調印後、佐伯町議会が「慎重にすべきだ」と合併関連議案を否決したこと。旧2町で計22の議員定数が、新町では16に減る。佐伯の人口は旧和気の3分の1で町議の多くが議席を失う。「クビになりたくないだけ」と怒った合併賛成派の請求で異例の佐伯町長、町議会のダブルリコールが成立。町を二分するダブル選も賛成派が制し、合併にこぎ着けた。

 「議員はろくに働かない。地方自治への失望だけが残った」と、自営業の男性(65)は言う。合併後は旧和気町側が栄える一方、佐伯はさびれた。町は一体感に乏しく、町政に白けた空気も漂う。

 地域の議席を守りたい−−。そんな思いを抱く関係者の説得で、京都でイベント企画業を営んでいた被告は、合併後2度目の町議選に立候補した。人口で劣る旧佐伯町の従来の地区推薦候補では当選ラインに届かず、周囲は若さに期待した。

 被告を「限界集落の期待の星」と表現した佐伯側の元町議は言った。「若手に声をかけても、議員報酬(月額約23万円)じゃ食えない、と言う。議員は年金生活者のオンパレード。みんな彼に飛びついたんじゃ」

 町の高齢化率(人口に65歳以上が占める割合)は県内上位の約36%。彼を除く当選者の平均年齢は63.5歳。50代2人、70代1人で、残りは60代。25歳の若者は異彩を放った。

 「棚田のコメでもストーリーがあれば絶対に売れる」。当選後は経験を生かし、地元産米のブランド化に取り組む。だが、本業の資金繰りで借金を重ね、思いついたのが「アニメ制作でまちおこし」という架空の投資話。「国のクールジャパン事業で1.5倍にして返す」などと言い、知人らから計300万円を詐取したとされる。

 「僕、ルパン三世になりたい。やりたいことをやって、キメる時にキメる」。被告は事件前の昨年4月、ネットメディアに語った。現職町議の一人は「地域を歩き、町民の声をもっと聴いてほしかった。町議はアニメの登場人物ではない」と嘆いた。

 安藤勝介議長は「地域がしっかりしていたころ、彼のような人物は選ばれなかった」と真剣に悩む。以前は、消防団長やPTA会長、自治会長など地域のまとめ役で汗をかき、訓練を積んだ人物が自然と担がれた。地方自治を下支えするこうした仕組みは、合併で傷み、人口減や高齢化の波に洗われている。片倉被告の公判は次回来年1月に結審する。


戦争体験談:20代の6割「聞いたことない」

毎日新聞 2014年12月25日 08時30分(最終更新 12月25日 11時08分)

 戦争体験のない人でも2人に1人が体験談を聞いていることが、毎日新聞社と埼玉大学社会調査研究センターが行った時事問題世論調査「日本の世論2014」で分かった。20代は6割が体験談を聞いたことがなかった。日本の人口の8割は戦後生まれになり、来年は戦後70年。戦争体験の継承の仕方を考える時期にきている。

 回答者のうち、戦争を体験した人は14%、していない人は85%。体験していない人に「太平洋戦争を実際に経験した人、もしくは、親や祖父母から体験談を直接聞いたことがありますか」と聞いたところ、53%が「聞いたことがある」と回答した。「聞いたことはない」は46%だった。

 年代別では、40代〜80歳以上で「ある」は過半数、最多は60代の62%だった。大半の親が戦後生まれとみられる30代は「ない」57%に「ある」43%と逆転し、20代は「ない」60%、「ある」39%。「ある」人の27%が、「不安に思っていること」を聞く質問に「憲法改正」を挙げた。「ない」人より9ポイント高かった。

 「誰からどのような体験を聞いたか」を自由に書いてもらう質問には、445件の回答があった。「誰から」は祖父母や父母が多く、内容は戦地経験や空襲、食糧難、疎開体験、日本国外からの引き揚げ体験など多岐にわたった。

 調査は10月中旬から12月初旬にかけて全国の有権者1800人に郵送で行い、回収率は59%だった。【扇沢秀明】

 今の政治は、企業の兵隊を作り出すことは得意でも、次世代の国を担う人を育てることはおざなりにしてきた。
 そのつけが、この有り様なのではないか。
 地方選挙が盛んだが、みなさんはそのことを考えて欲しい。20年先の日本はどうするのかを。

 次回のコラムですが5月5日に更新予定でございます。