2014年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子ども数)が、前年比0・01ポイント減の1・42となった。9年ぶりの下落だ。
 05年に過去最低の1・26となった後、団塊ジュニア世代(71~74年生まれ)が親になる時期に入り、上昇カーブを描いた。その傾向にブレーキがかかった。
 出生数は、前年比2万6千人減の100万3千人余りで過去最少を更新、このペースが続くと今年は大台割れが確実だ。
 人口維持のために必要な出生率は2・07程度だ。政府が少子化対策に取り組んで20年になるが、なかなか光が見えてこない。
 実効性ある取り組みを加速させなければならない。
 団塊ジュニア世代は40代に入ったが、晩婚化により30歳以上の出生率は前年を上回っている。その一方で、20~29歳の落ち込みで、出生率全体を下げた。
 北海道の出生率は1・27で、都道府県別で3番目に低い。深刻だ。道が組織を整え、対策に乗り出したのは当然である。
 年々強まる20代の出生率の低迷は、社会の変化と無縁ではない。
 非正規労働者が2千万人を超え、労働者全体の4割に迫る。雇用が不安定で収入が少なくなると、男女とも結婚意欲が弱まることが指摘されている。
 たとえ結婚しても、働く女性も男性も労働時間が長く、育児休暇が取りにくい職場が多い。都市部では待機児童問題が解消せず、保育所の利用もままならない。
 これでは子どもを産み、育てる十分な環境とは言えまい。雇用環境を根本から変えなければ、解決にはつながらない。
 政府は3月「少子化対策大綱」を決定、妻出産後の夫の休暇取得率を80%、一時預かり保育利用を年延べ1134万人―などの数値目標を掲げた。確実に進めたいが、それだけでは不十分だ。
 同じように少子化に陥ったフランスでは、育児手当の拡充、出産・子育てと就労を両立させる多彩な政策を強力に進め、1995年に1・6台だった出生率を10年余りで2・00前後まで回復させた。
 少子化解消は複合的な対策が必要であり、参考にしたい。
 制度上の改善はもちろんだが、地域の協力も欠かせない。
 国内一高い出生率1・86の沖縄県では、特に離島で隣近所で子どもを預かるなど、地域ぐるみで支え合うことが根付いている。
 こうした「支え合い」も難題克服のヒントになる。