2015年8月20日木曜日

イギリス・フィナンシャル・タイムズが日経の編集権の主導権を握らなければ意味は無い

日経によるFT電撃買収は、うまくいくのか
わずか2カ月で大型買収を決めた事情とは?
小林 恭子 :ジャーナリスト
2015年07月24日 東洋経済オンライン

 英高級紙フィナンシャル・タイムズ(FT)を買収するのが日本経済新聞社だった、というニュースにイギリスのジャーナリズム周辺は騒然としている。
 それは、「まさか日本の新聞が買うとは!」という反応である。この日、どこかがフィナンシャル・タイムズを買収するという記事はあちこちに出てはいたが、どの報道も日本の新聞は想定外だった。プレスリリースや記事を何度か読み直さないと、その事実が頭に入ってこないぐらい、あっと驚く買収劇だった。
 プレスリリースや日経を含む数紙の報道によると、今回の買収の概要は次のようなものだ。
 英出版大手ピアソンは、傘下のフィナンシャル・タイムズを発行するフィナンシャル・タイムズ・グループを日経に売却することを決定。金額は8億4440万ポンド(約1620億円)。「日本のメディア企業による海外企業の買収案件として過去最大」(日経)で、「読者数では世界最大の経済メディア」(同)となる。
 日経によれば、買収の目的は「メディアブランドとして世界屈指の価値を持つFTを日経グループに組み入れ、グローバル報道の充実をめざすとともに、デジタル事業など成長戦略を推進する」である。

「グローバル企業の一部になることがFT成功の道」
 ピアソン側のFT売却の理由は、「私たちは、モバイルとソーシャルが中心となる、メディアの転換期にいる」、FTの「ジャーナリズムや商業的成功にとって最善なのは、グローバルなデジタル・ニュース企業の一部になることだ」(ピアソンCEOジョン・ファロン氏)。
 今回の買収には、フィナンシャル・タイムズ・グループの中にあって、ピアソンが50%出資する世界最大規模の経済誌「エコノミスト」や、ロンドンにあるFTのオフィス自体は含まれていない。「バンカー」「インベスター・クロニクル」などの媒体は買収対象に含まれている。
 ピアソンによると、FTグループは昨年の決算で、3億3400万ポンドの売り上げと2400万ポンドの営業収益を生み出している。激変するメディア界にあって、ちゃんと稼ぐことができている会社だ。日経による買収金額は35年分の営業利益相当であり、今後の利益成長を見込めば、決して高すぎるような買い物ではないだろう。
 「絶対に、ない」--。2013年までピアソンCEOだったマジョリ・スカルディノ氏は、幾度となくあったFT紙の売却話に対し「私がいる限り、売らない」と常に否定してきた。ネットニュースが人気を得て、紙の新聞が苦戦している時代に、歴史もブランド力もあるFTでさえ、売却の噂が絶えなかった。スカルディノ氏から現CEOファロン氏の移行で、売却話に道が開いた格好だ。
 これまでにFTを買収するのではないかと言われたのは、米ニュース社のルパート・マードック会長や米通信社ブルームバーグを立ち上げたマイケル・ブルームバーグ氏などである。トップの顔が思い浮かぶ、そうそうたる名前ばかりが出ていた。
 ちなみに、アマゾンのジェフ・ベゾス氏が2013年に米ワシントン・ポスト紙を買収した時の価格は2億5000万ドル、マードック氏が米ウオール・ストリート・ジャーナルを所有するダウ・ジョーンズを2007年に買収した時は約50億ドルだったといわれる。
 23日朝(ロンドン時間)、過去58年間FTを所有してきたピアソンがいよいよ「売却について高度な段階の交渉に入った」とロイターが報じた。これに続いて「ブルームバーグが買い手だ」という記事もあったが、数時間後に、正式な買収リリースが出たことになる。
 FTによると、最終段階の交渉は日経と「欧州でもっとも成功した新聞」とされる、独アクセル・シュプリンガー社との戦いになった。シュプリンガー社との交渉は1年前から続いていたが、日経が話に加わったのは2カ月ほど前だった。つまり、後から出てきた日経が横取りをしたようなかっこうである。
 日経は今年3月26日付で喜多恒雄社長が代表権のある会長に就き、岡田直敏副社長が社長に昇格したばかり。この新体制になってから手を染めたのが、この買収だ。幹部によると「喜多さんは『シリコンバレーの会社に出資をすることは重要』と判断してエバーノートに23億円出資。その後、国内でいくつかのベンチャーに出資するなど、新しい動きを進めてきた。今回の買収も、喜多会長が中心になって進めたもの」と解説する。24日午前に開かれる同社の臨時取締役会において、今回の買収について説明がなされるようだ。
 1960年代、日経は圓城寺次郎という不世出の経営者のもとで、新聞製作の電子化、日経産業新聞発刊、マグロウヒルとの合弁会社(現在の日経BP)設立、テレビ東京買収、日本経済研究センター設立など、飛躍の基盤を作った。時を経て、2000年前後には市場取引システムにまで手を染めるブルームバーグのようなポジション獲得を目指し、大きな損失を出したことがある。それ以降はしばらく、「自前主義」のモードにあったが、喜多時代に入って、攻めに転じ、ついに圓城寺時代にもなしえなかった大攻勢に打って出ることになった。
 この日経による買収をFTはどう受け止めたか。
 ガーディアン紙の報道によると、リリース発表直後、FT編集室は騒然となったという。急なニュースであったことと、日本の新聞社に買われたことで、勤務場所の移動があるかどうかが懸念となった。
 また、FTの編集の独立性が失われるのではないかという懸念も表されたという。FTグループのジョン・リディング会長は「編集権の独立権問題は交渉の中で重要な位置を占めた」として、保障されることを確約している。
 ピアソンは米国の教育出版市場で主要位置を占める。米国市場は同社の売り上げの60%に上る。4万人の従業員が80カ国で働いている。
 127年の歴史を持つFTの発行部数(紙と電子版)は73万7000部。有料購読者の70%が電子版の購読者だ。5年前は24%だった。2012年に電子版の購読者が紙版の購読者を上回った。紙版の発行部数は過去10年で半減し、最新の数字では21万部(英ABC)。電子版は急速な勢いで伸び、現在は50万4000部(前年比で21%増)。ウェブサイトへのトラフィックの半分がスマートフォンやタブレットによる。
 デジタル化を進めてきたライオネル・バーバー編集長はFTに30年間勤務し、2005年から現職だ。昨年9月のガーディアン紙のインタビューで、「ジャーナリズムの中でももっとも恵まれた仕事の一つだろうと思う。すぐに辞める気はない」と述べていた。今回の日経による買収について、バーバー編集長は「FTは世界的な資産だ。新しい所有者と共に働くことによって、これを維持できることを確信している」。

最初は別の名前だったFT
 そもそもFTがどのような会社なのかも、概説しておこう。
 FTは1888年、銀行家ホレイショ・ボトムリーが「正直な金融家と尊敬できる仲買者」のために、「ロンドン・フィナンシャル・ガイド」として創刊した。当初は4ページ組みで、名前を「フィナンシャル・タイムズ」に変更。ロンドンの金融街(シティー)向けの新聞で、4年前に創刊されていたライバル紙フィナンシャル・ニュースと競争関係にあった。紙面をピンク色にしたのは1893年で、ほかの経済・金融紙と差をつけるためだった。
 1945年、競合関係にあったフィナンシャル・ニュースと合併。執筆陣はニュース紙から、名前とピンク色の紙面はFTからもらったという。
 FTは「経済専門紙だから電子版購読者を増やせたのだ」という見方がある。日経の電子版の伸びを見ても納得が行く説明だが、単にそう結論付けてしまうと見落とす部分があるように思う。
 FTと並ぶ電子版成功例の英「エコノミスト」にも同じことが言えるが、FTは経済、金融を中心としているものの、政治、国際、社会、文化、論説といった幅広い分野の記事を掲載する。英国を含む欧州では経営幹部ともなれば、経済、政治のみならず、テクノロジー、アート、音楽、ワイン、旅、健康的なスポーツ、社会貢献活動など広いテーマについて知っていることが重要だ。
 1部売りが一般紙より高いこともあって、読者は一般紙の読者よりも経済的に余裕のある人になるが、FTは経済・金融専門紙であることに加え、世界中にいる知識層向けの高級紙=クオリティー・ペーパーでもある。
 日本で相当する新聞を探すとすれば、誰もが真っ先にあげるのが日経だろう。FTは英語媒体ということもあって、世界中のエリート層、知識人に読まれている。「FTがなければ、コメントできない」(No FT, No Comment)は著名な宣伝文句だ。
 2008年頃の世界的な金融危機で、多くの新聞が広告収入の激減に苦しんだ。FTは「広告収入の上下に左右されない経営」を率先して実行した新聞だ。オーディエンスの計測に独自の方法を導入し、電子版アプリを独自開発など、「自前主義」の新聞でもある。
  「どちらも経済紙」、「電子版で成功」、「読者は企業経営者やホワイトカラーの職業人」・・・日経とFTは共通点が多いように見える。
 ただし、日経とFTは新聞文化が異なる日英のメディアだ。
 FTなどの「高級紙=クオリティー・ペーパー」は社会の中の一定の知識層を対象にしており、部数が非常に少ない。日本のように「1部でも多く、あらゆる種類の層の人に、という部分では勝負していない。また、「権力に挑戦するジャーナリズム」が英国の新聞の場合はデフォルトの姿勢だ。日本は是々非々での「挑戦」であり、必ずしもデフォルトではないようであること、など。

オリンパスの不正を報じないメディア
 ガーディアン紙は社説記事「メディアのグローバル化はフィナンシャル・タイムズにとって良いニュース」の中で、東芝の不正会計の話に触れ、日英の金融スキャンダルについての考え方の違いを挙げる。日本ではこのようなスキャンダルで「大体が犠牲者はいないと見られがちだが、英米では株主の利益を重要視し、正確な情報を与えられなかった株主が犠牲になったと考える」、という。
 また、損失隠しスキャンダルがあったオリンパスも例に出す。このスキャンダルをスクープ報道したのはFTだったとし、日経は「報道が避けられなくなるまで、報じなかった」と断じる。
 日本の大手メディアのジャーナリズムが「腐敗しているのではないが、敬意を表する」傾向があるのに対し、アングロサクソン系はそうではなく、「何物にも敬意を表さない」。
 日英のジャーナリズムの立ち位置は異なるが、「それぞれの新聞社の文化の良い部分がお互いに影響を与えあうだろう」としている。
 メディア環境が激変する今、どこの新聞社も生き残りをかけて必死だが、日経とFTの一体化で、互に学び合うことも多そうだ。
 例えば、電子版購読者の増やし方についての情報だ。これは日本のどの新聞も欲しがる情報だろう。日経はこれから、FTに蓄積された情報をかなり共有することができるかもしれない。
 記者レベル、制作レベルでの交流によって日経が得られるメリットは大きい。互いに大きな刺激になることは間違いなく、場合によっては両社の経営陣が相互に交流すれば、刺激は大きいだろう。
 ジャーナリズムの面からも期待が大きい。英国の新聞記者なら誰でもやっているツイッター使いや、ウェブサイト上のブログ執筆、国際的なリーク情報を基にした調査報道、ソーシャルメディアに上がってくる生情報の検証スキル、大事件が発生したら、記者2−3人がことの経緯をどんどん綴ってゆく「ライブブログ」など、英語圏のジャーナリズムで盛んに行われている手法が日本に直に入ってくれば、これは相当おもしろい。
 経営としては難題が多そうだが、ジャーナリズムの観点からは、久方ぶりに日本の"村社会"に大きな刺激をもたらすことは間違いない。
http://toyokeizai.net/articles/-/78135

オリンパス元社長、FT買収に懸念「日経は企業と親密」
編集委員・奥山俊宏
2015年7月28日07時02分
http://www.asahi.com/articles/ASH7W532ZH7WULZU00N.html

 日本経済新聞社による英経済紙フィナンシャル・タイムズ(FT)の買収について、日本の精密機器メーカー・オリンパスの社長だったマイケル・ウッドフォード氏(英国人)が朝日新聞の取材に答え、「ジャーナリズムにとって悲しいことだ」と語った。
 同氏は、オリンパスの社長として巨額不正経理の疑惑を社内で追及したところ、2011年10月14日、取締役会によって解任された。その日のうちに、FT東京支局のジョナサン・ソーブル記者に資料を渡して疑惑を告発。以後、疑惑はFTなど欧米の新聞で大きく報じられた。
 ウッドフォード氏は日経について「企業と親密で、かつ、企業に頼っている」と批判。「日本企業の不正を暴露したい人は今後、FTには行かないだろう」と述べた。日経新聞は、11月8日にオリンパスが損失隠しを認めるまで疑惑を大きく扱わなかった。ウッドフォード氏は「ソーブル記者に会って数時間のうちにFTが疑惑を報じたのとは対照的に、日経はその後も長く、オリンパスのPR事務所のように行動した」と述べ、「日経は、日本の大企業への批判の先頭には立たない。その観点では日本メディアの中で最悪だ」と批判した。「もし当時、FTが日経に所有されていたら、私は、FTではなく、ニューヨーク・タイムズかウォールストリート・ジャーナルに行っただろう」とも語った。
 買収について企業経営者としてどう見るかと問われると、ウッドフォード氏は「経常利益2400万ポンドのFTに日経は8億4400万ポンドを払う。円が安いときに払い過ぎだと思う。理屈が通らない。また、日本人は、FTのような自由な気風の下で働く西欧人を管理するのが不得意で、それも日経にとっては問題だ」と批評した。
 一方、昨年10月にFTからニューヨーク・タイムズ東京支局に転職したソーブル記者は「日経傘下のFTであってもオリンパスのスキャンダルを報じただろう」とツイート。取材に対して「人員削減がなく、新規の投資もありそうなので、FTが日経に買収されたことは、FTのジャーナリズムの質の観点からもメリットがある。日経を通してFTの報道に介入しようとする日本の権力者がいたときに日経がどう対応するのか、日本に関する報道については少し心配だが、日経はFTを『日経化』しようとは思っていないでしょうから、過度に心配する必要はないと思う」と語った。
 FT自身は25日付の紙面で、ウッドフォード氏が「日経は企業社会・日本から独立しているとは見られていない」と語ったと紹介し、同じ記事の中で、日経の喜多恒雄会長がFTの編集の独立を尊重すると約束したとも報じている。(編集委員・奥山俊宏)


 はっきり言って、今回の買収の話にもう一つ私から条件を加えねばならない。
 それは、現在の日本経済新聞社の論説委員や編集委員の一新を行い、FTから4分の3以上招くべきだと断言する。つまり、戦うジャーナリズムの精神が日本経済新聞には欠落しているのは明らかである。アベシンゾー被告から不正接待を受けている愚か者が論説委員だなんて、それこそイギリスではスキャンダルになるのは間違いない。更にウッドフォード氏を社長に抜擢すべきだ。
 まだまだ条件はある。日本経済新聞社については読売新聞とフジサンケイグループの吸収合併と新聞の無償譲渡を行うべきだと指摘した。すでに、本多勝一氏が以下の提案をしている。

 ジャーナリスト党宣言 - タブーなき第四権力、新しい日刊新聞のために
(1) いわば高質紙(クオリティー=ペーパー)として週に五日発行。夕刊なし。休刊は日・月の二日。ブランケット版(現行の一般紙と同じ)で当面は12ページだて。
 (2) 土曜または日曜に特別版(いわゆる日曜版に相当)を発行するが、これは従来の常識的日曜版とは全く異なり、総合雑誌や週刊ニュース雑誌の役割を果たすほか、重要な記録を網羅的に収録し、当面は30~50ページだて。
 (3) 原則として宅配を考える。したがって創刊段階で宅配可能な地域以外は当面郵送となる。
  (4) 経営の独立堅持のため一種の会員制とし、創刊時の全読者に株主になっていただく。一株五万円(商法第一六六条ノ二による)とし、創刊時読者(株主)は半年 間の購読料を無料に。読者(株主)数を五万人確保できた時点で創刊開始とする。影響力をもつメディアとしての安定部数の目標は三〇万部。一定限度内で多数 の株を一人が持つことも可能なので、五万人は五万部に相当するが、株数はもっと多くなって約三〇億円の見込み。利潤があれば株主の購読料を半年単位で値下 げしてゆく。
 (5) 一般紙面の編集方針は、一切のタブーを排するために結果として政党的中立となる。 「中立」 はしたがって、現行マスメディアのような消極的(いわゆる 「左」 「右」 を排除した)中立ではなく、積極的(それらをとりこんだ)中立となろう。日本の宿痾(しゅくあ)となった官僚主義(官権)との対決をはじめ、特に環境問題 と人権問題を重視する。関連して裁判批判にも重点をおく。
 (6) 一般の雑報ニュースは通信社のものを全面的に採用し、自社のスタッフ記者は全員が独自の署名記事だけを書く。したがって雑報を争う記者は必要とせず、たと えば 『朝日新聞』 でいうなら編集委員クラスだけによる少数精鋭主義をとる。大学新卒の記者は当面採用せず、実績ある中堅以上のジャーナリスト集団とする。
 (7) 紙面整理には、たとえば現行新聞のようなページごとの独立性をやめて外国紙のように 「○○ページにつづく」 方式を採用するなど大幅な改革をすすめ、 「社会部」 「政治部」 といったセクショナリズムを制度的に廃する。
 (8) 電波メディアはもちろん、活字メディアにしても、他の新聞・雑誌が報じた重要な特ダネは 「○○新聞によると」 として紹介し、記録を重視する。
 (9) フリーのライター・写真家・知識人に多くの紙面を提供し、また稿料を高額にしてすぐれたフリーを育てる。
 (10) 外国情報に力を入れ、アジアを始め第三世界の声を重視して、それぞれの専門家などにほぼ定期的に寄稿していただく。
 (11) 音楽・演劇・絵画・ルポルタージュそのほか広範囲の文化を重視、旧来の小説偏重を是正してゆく。
 (12) 各種の市民運動やネットワークを重視し、その情報・動向・交流等をきめこまかく報ずる。外国の市民運動やNGO活動の類も広く伝える。
 (13) テレビ・ラジオ欄は、単なる番組紹介にとどまらず、批判的視点を大幅にとり入れてゆく。一般にメディア批判や 「ニュースの裏側」 的記事を重視する。スポーツ関係も同様。
  (14) マスメディアにおける反論権の確立をめざすべく、反論文の掲載を重視するほか論争(ディベート)を慫慂(しょうよう)し、盛んにする。本紙の記事や評論に 対する反論・再反論等はもちろん、他紙誌によって捏造・改竄・プライバシー侵害等による被害を受けた側に対しても、正当な反論であれば紙面を提供して 「マスコミ公害」 と戦う。
 (15) 日曜版(または土曜版)には、長編ルポ・長編論文のほか、講演・講義でも重要なものは収録する。書評も重視して、ときには一冊の本に全ページをついやすような論評も掲載し、稿料も相応に高額にする。
 (16) スタッフ記者による署名記事は、各専門分野や独自の視点による記事を中心に、記録性・解説性・歴史性を重視し、大きな事件などについては随時「解説的要約」を掲載し、社外筆者にも多く登場していただく。
 (17) 読者(株主)の意見を最大限に尊重すべく、投稿ページに質・量とも高い比重をおく。
 (18) 広告はむろん掲載するものの、経営上の比重としては過分な重きをおかない。
 (19) スタッフ記者の中の10人前後を編集委員とし、これに業務関係役員数人を加えて最高決定機関とする。社長はその権限を代行する。
以上はほんの 「叩き台のための叩き台」 にすぎない。 「本番の叩き台」 のためには、さらに多くのジャーナリストや有識者ら広範囲のブレーンからご意見を求めるほか、 『ハンギョレ』 そのほか外国の新聞も取材して参考にする。
 そこで、前述の 「本当に実現する段階にもし到った場合にご協力あるいはご支援をお願いすぺく、そのための」 つまり 「本格的お願いの前段のお願い」 として、本誌読者を含む多くの方々に以下のような呼びかけをしたい。
 このような日刊紙を、 もし創刊可能な条件がととのった暁には、ひろく購読者(すなわち株主)を募り、五万人に達した段階で刊行にふみきる。そのように募るときに直接お便りで要 項をお知らせしたいので、購読ご希望の方々(すなわち株主予定者)は次の宛先へ往復ハガキで住所氏名(郵便番号とも)、電話番号を ” 登録 ” していただけたら有り難い。
<文庫収録にあたって> 『朝日ジャーナル』 発表当時の原文では、ここに ” 登録 ” さきの日刊新聞創刊準備委員会の仮住所と関係事項、創刊断念の場合の通知方法などが示されていました。しかし日刊新聞は配達問題が最大の障害となってまだ 進展をみないので、この部分を削除します。進展があって創刊が決まれば、主要日刊紙の大型広告などでお知らせすることになりましょう。
  このような大計画は、いうまでもなく私一人で考えているのではない。強い意志と実力を備えた個性を、少なくとも数人は必要とする。またこうした性格の新聞 は、もはや読者(株主)以外にいかなるスポンサーもタブーもなく、またスタッフ記者は真の意味でのジャーナリストにふさわしい理念を信条とする者に限られ る。その人々を 「党」 に類する集団としてみるならば、なかば冗談もこめてにせよ、 「ジャーナリスト党 (*4)」 とか 「かわら版党」 とか呼ぶこともできるではなかろうか。
*このコラム 「貧困なる精神」 も、今週号の二〇八回をもって、本誌休刊とともに不本意ながら終わります。この連載に対する 内外の ” 圧力 ” がありながらここまで続けてこられたのは、ひとえに読者の圧倒的支持があったからこそにほかなりません。それなしには ” 圧力 ” にも耐えきれなかったでしょう。数々の御激励のお便りにいちいち返信を書く余裕はありませんでしたが、この場をかりて心からお礼を申し上げます。長いあい だ本当にありがとうございました。記者冥利につきる光栄です。思えば本誌創刊から休刊までの三三年間は、そのまま私の新聞記者生活(朝日入社から退職ま で)のそれでした。
  「貧困なる精神」 シリーズの 「場」 がなくなることを ” 祝福 ” してくれている勢力もありましょうが、残念ながらそれは空しいことになると思います。この 「貧困なる精神」 という看板は、最初はミニコミの 『エイムズ』 、次いで月刊誌 『潮』 、並行して同 『家庭画報』 、そのあとが本誌でしたから、四誌にわたって書きつがれてきたわけです。実はすでに来週から五誌目として 『サンデー毎日』 に引っ越して登場することに決まっています。
 それでは 『朝日ジャーナル』 の読者だった皆さん、さようなら。

( 『朝日ジャーナル』 1992年5月29日=終刊号)
http://honkatu.blog24.fc2.com/blog-entry-2.html

 この実現に日本経済新聞も今までの悪行を償う意味で今すぐ貢献してもらおう。
 読売新聞を吸収合併して印刷会社を独立させる、記事の配信を条件に、無償でスポーツ報知で悪名高い報知新聞社を本多氏を代表とする市民のコンソーシアムに売却し、記事の相互配信で協力するといい。自称編集委員共はその記者として出直すがいい。そこでさぞかしジャーナリズム精神を発揮することが出来るであろう。