高齢者だらけのゴーストタウンに......オリンピック後に東京が直面する恐ろしい未来図
この年、昭和の名横綱・大鵬が世を去り、福知山花火大会の爆発事故では62名が死傷。福島第一原発の汚 染水漏れが発覚、トラブルの深刻さを示す評価尺度は「レベル3」に引き上げられ、「国の借金」は初めて1000兆円を超えた。オリンピック開催決定はそん な暗澹たる世相を吹き飛ばす「福音」となった。
特に浮かれまくったのは経済界。東京都はオリンピック開催の経済効果を13年から20年の 7年間で計2兆9609億円と試算したが、SMBC日興証券は約4.2兆円と上方修正。「ご祝儀相場」はこれに留まらず、森記念財団は国民の消費拡大と企 業活動の活発化など「ドリーム効果」を加算し19兆4000億円とぶち上げた。揚句の果てにみずほ総研は28.9~36兆円にまで吊り上げた。
結局あれから2年、日経平均株価は20000円台を回復したものの、市民レベルの暮らし向きは一向に変わることなく今に至る。一体あの騒ぎはなんだったんだろう。
3月に出版された『東京劣化』(松谷明彦/PHP研究所)はそんな違和感を抱き始めた人々に、あるいはいまだに希望を捨て去れない人たちに冷酷な現実を突 きつける。著者は大蔵省主計局、大臣官房審議官等を歴任した財政学、人口減少研究における第一人者である。具体的に試算されたデータとマクロ経済学、社会 基礎学の法則を駆使し、「東京オリンピック」前後に起こりうる「東京の現実」を暴き出している。
まず人口構造の悪化はすさまじいことにな る。2010年に対し2040年には東京の高齢者は143.8万人増加し、1119.5万人に達する。人口は6.5%減に対して高齢者は53.7%も増加 する。すでに高齢化のピークにある秋田県は人口は35.6%減だが、高齢者も4.5%減るのとは対照的だ。40年、東京の労働力高齢化は全国一となり、労 働力、作業能率は能率は劣化する。
出生率は2012年時点で東京は1.09と全国で最低(全国平均は1.4)。生涯未婚率(2010年) は男女ともに最多で男性25.25%(全国平均20.14%)。女性17.37%(全国平均10.61%)。東京は今ですら全国でダントツの少子高齢化の 進んだ人口劣化都市なのである。
これから予想される「東京劣化」の第1は、首都・東京のスラム化。急速な高齢化は経済成長率、貯蓄率が大 幅に低下する。結果、公共・民間のインフラを良好な状態に維持することがはるかに困難となるというのだ。本来ならインフラを計画的に整理縮小すべきなのだ が、それどころかオリンピック開催とその派生効果によって、インフラは一段と膨張を続けている。東京オリンピックの売りのひとつは既存のインフラをフル活 用する「コンパクトな大会」と言われるが、実際は32競技のうち既存のまま使うのは8施設に留まり、あとは新設か仮設・改修が余儀なくされ、関連施設の総 投資額は4500億円にのぼる。そのあおりで適切な維持更新のできないインフラが年々増加し、東京の街がスラムと化す恐れが出てくる。1970年代の ニューヨークはインフラの劣化により約100万人もの市民がニューヨークを脱出したという。脱出したのはまず富裕層と身軽な若い世代だった。同じことが東 京で起これば高齢化と財政の悪化は避けられない。
さらに東京では今後大量の高齢者が住まいを失う可能性が高い。東京の高齢者の4割は借家 住まいだが、年金収支は急速に悪化して、給付水準は大幅に引き下げられる。近い将来、家賃の払えなくなった高齢者が街に溢れだすことになる。しかも、老人 ホームは今でさえ圧倒的に不足、近隣県の施設に預かってもらっている状態だ。都心では土地代を合わせて一床当たり2000万円にもなると言われている。 40年に老人ホームの需要は約30万人にのぼり、近隣県でも預かれなくなるとさらに100万床が必要で、コストは20兆円もかかる。新たに建設することは 難しく、東京に「高齢者難民」が大量に発生する可能性は極めて高い。これを回避するためには必要不可欠なインフラに限定して整備するべきなのだが、オリン ピック関連のインフラ整備がこれを妨げる。
《今更ではあるが、オリンピックの招致は愚かな選択であったと言わざるを得ない》と著者は書く。
意外に思えるのは、東京の文化や情報の発信力が弱まる、という指摘だ。「極としての東京の劣化」と著者は表現しているのだが、今後東京の税率は地方よりも かなり高くなり、反面、公共・福祉サービスは地方に比べて貧弱にならざるを得ない。失業も増加する。すると地方から東京を目指す若者は減少し、逆に東京か ら地方に移住する人が増加する。そうなれば財政収支はさらに悪化し、ますます東京は敬遠されるという悪循環に陥るというのだ。これまで、ファッションや文 化の独占的な発信地であった東京の存在意義は薄れていく。ヘタをすると麻布も表参道も白金も「総巣鴨化」しかねない。
生活環境も劣化す る。今世紀半ばには東京の人口減少は本格的になり、下水道、廃棄物処理システム、鉄道などは人口悪化が採算性の悪化をもたらし、適切な維持管理は困難にな り生活水準は悪化する。例えば鉄道の沿線人口が減少すれば路線を廃止、短縮せざるを得ない。鉄道のなくなった地域は価値を失い、ゴーストタウン化する。
都市の国際化という観点から見ると、東京は「中流都市」へと劣化する。東京に集中する日本の株式市場、外国為替市場はミラー市場と呼ばれ、ニューヨーク、 ロンドン、シンガポールで形成された価格を映すだけで、固有の価格、他市場に影響力のある価格を形成する機能を持たない。外国の通信社はかつて東京に支社 を置いていたが、北京支局の無人事務所化している。電話だけが置かれていて、海外からの電話は北京にそのまま転送されている。欧米先進国の企業も東京から 撤退し、中国や東南アジアに移転した。もはや情報を得るうえで意味がない都市とみなされている。
加えて、海外留学の激減、外地勤務を嫌う ビジネスマンの増加により東京の国際化はますます停滞し、いずれ先進国は東京に目を向けなくなるという。「中流都市」どころか「世界の田舎」だ。世界に対 する東京のアピールと国際化を目論んだ東京オリンピック開催は皮肉にもその目論見にブレーキをかけることになる。
オリンピック前後に起こる東京の劣化とは、《最も確かな予測といわれる人口推計と、そうした人口変化がもたらす必然的な事象から論理的に導かれた『確実な危機』なのです》と筆者は念を押す。
本書からは離れるが、そもそもオリンピック開催が「打ち出の木槌」と考えること自体間違いだとする指摘は他にもある。米経済誌「フォーブス」の元アジア太 平洋支局長ベンジャミン・フルフォードの最新の著作では、経済学者のジェフリー・G・オーウェンのリポートを紹介している。曰く
《オリンピックのスタジアム建設などに伴って生じる雇用は、完全雇用ならば他の雇用を奪って生じたことになるため意味はない》
《1996年のアトランタでは、一時的に雇用が増えたものの短命に終わり、観光資源としても他の観光地への客を奪っただけに終わった》
《2000年のシドニーでも建設された施設がその後及ぼした経済効果はむしろ支出を増やすものになっている》
というもの。東京も同じ轍を踏むことにはならないだろうか。
歓喜と喝采に沸いたブエノスアイレスの奇跡は、本当に人々に僥倖をもたらすのだろうか。ひょっとして、あの「TOKYO」の一声は、東京劣化のカウントダウンだったのかもしれない。そういえばあの時、ロゲ会長も仏頂面だったし。
(相模弘希)
私はだから、トルコ・イスタンブールに五輪の運営権を譲渡すべきだと何度も指摘してきた。
五輪にこだわりたいというのなら、私は以前から指摘したようにスペシャルオリンピックスの誘致を行うべきだった。
そして、こんな恐ろしい状況が今や日本中にはびこっているのだ。
売春、シニア婚活パーティ、ストーカー...年老いても“性“に振り回される高齢者の悲哀
65歳以上の高齢者の人口増加が止まらない。2013年には団塊世代の中心である昭和23年生まれが高齢者の仲間入
りをし、日本の4人に1人が高齢者、という老人大国になった。また、昨年7月に厚生労働省が発表した2013年における日本の平均寿命は、男性が
80.21歳、女性が86.61歳と、初めて男性が80歳越えをした。
現代日本では高齢者の仲間入りをしてからも人生はまだまだ続くのだ。そんな高齢者たちの、あまり報道されない裏の部分を取材したのが『老人たちの裏社会』(新郷由起/宝島社)だ。
万引き常習、DV、暴行事件、孤立死......。さらに、同書には、老いてもなお衰えることのない性欲を持て余す高齢者たちの姿も描かれている。たとえ ば、それが現れているのが、婚活パーティ。パートナーに先立たれた高齢者が低予算で気軽に異性と出会えるパーティは自治体や民間が主催して各地で開催され ているが、セックス目的の参加も少なくないらしい。
とくに男性はその傾向が強く、作者が潜入したシニア婚活パーティは、女性は50代半ば から60代が中心、男性陣で60~70代だったが、「夫婦生活は極めて重要」と話す男性が非常に多かったという。一方、女性の側は「60過ぎたらアッチの 方は考えないわよ」という意見も多く、すれ違いが生じているケースも少なくないらしい。参加者の中にはこんな体験談を語る女性たちもいたという。
「二度目の食事の後で『二人だけになれる所へ行きましょう』と誘われたけど、『もう少し飲んでいたい』とやんわり断ったら、サッサとお勘定して出て行っちゃってそれっきり。結局、男はいくつになってもカラダ目当てなのかしら」(64歳女性)
もっとも、女性のなかにも年老いてセックスの歓びに目覚めたケースはある。本書には62歳でホテヘル嬢デビューを果たした女性も登場する。小柄で細身の小 池美幸さん(63・仮名)。15年近くセックスレスの夫は、近年、病が進行し、下半身が不自由に。そんなある日、ふと手に取った女性誌のセックス特集を読 んで、カーッと体が火照り出した。
「ものすごく久しぶりの感覚で、自慰までしてしまった。我に返ってから『このまま、主人しか知らずに女の人生を終わりたくない!』との気持ちがお腹の底から湧いてきたんです」(美幸さん)
その勢いに任せ、広告ページに載っていた風俗店に電話をかけて、初勤務へと至る。温和な上得意客に当たり、不安も吹っ切れた。最近は週に1~2回、夫のデイサービス利用の合間に「女を取り戻している」そうだ。
一方、高齢男性をターゲットにして金を稼ぐ"後妻業"ばりの女性もいる。3000万円ものカネを貢がせたのは68歳で離婚歴2回の吉川輝子さん(仮名)。 しかも、体の関係はナシで、だ。きっかけは6年前。腰の手術で入院した際、病棟で一回り年上の男性と親しくなった。相手はバツイチで子供とも疎遠。輝子さ んに入れあげてしまい、先に退院してからは足しげくプレゼント持参で見舞いに来るようになったという。
「モノなんていくらもらっても、この 歳になると嬉しくなんかないのよ。好みでもないノーブランドのバッグなんて、転売もできずにゴミになるだけ。年を取るほど先立つものしか必要じゃないし、 欲しくなくなる。だから『商品代金の分、いくらかでも現金の方が嬉しいわ』って本音を漏らしたのね」
すると翌日には現金10万円入りの封筒を渡されたのだ。
「大喜びよ!貯金を切り崩す生活だったから、『ものすごく助かるわぁ』って、思わず涙ぐんじゃったのよねぇ」
元生保レディの輝子さん、マメな電話やメールでのやり取りもお手のものらしく、こんなテクニックを同書で披露している。
「と にかく、いい気分にさせるのよ。上手に話を聞いて、認めて、褒めて、『あなたはほかの男性とは違う』と、自尊心をくすぐるの。そして、たまには母親のよう にして少しだけ叱ってあげる。若い娘のように、わざとスネてみせる。あとは多少の手料理で十分よ」と、テクニックを披露。「小金を抱えて使い道のないジイ さんなんて、ごまんといるのよ。ちょっとの笑顔で10万、20万出すのなんて屁にもならない。100万や200万なら『仕方ない』で済む相手だってね。少 し痛い目を見ても、男は見栄っ張りだから決して自分が『騙された』とは思いたくないのよ。そのさじ加減、欲張り過ぎずに恨まれない程度の金額の見極めが肝 心」
このコメントを読んでいると、逆に寂しい高齢男性が世に溢れている現状が見えてくる。1万件におよぶ死後の整理に関わってきた遺品整理専門会社「キーパーズ」代表の吉田太一氏によれば、孤立死の多くが男性だという。
「多 くの中高年男性にとって、離婚や死別による伴侶との別れは、文字通り生命線を断たれるのと同じ。なかでも今の60~70代は高度経済成長期にがむしゃらに 働いてきた世代で、プライベートに費やした時間が乏しい。家事や子育ては専業主婦の妻任せで、子供との繋がりも薄く、仕事以外での社会性が培われていない 場合が少なくない」(吉田氏)
男性が年老いてなお、女性を求めている背景には、前述した性欲ももちろんあるだろうが、一番大きいのはこうした孤独への恐怖ではないだろうか。前述の婚活パーティでも、男性の参加者には「女が生活の面倒を見て当たり前」という意識が根強いと作者は分析している。
男性は、ストーカーに走るケースも少なくない。同書には、高齢者のストーカー被害にあった女性の証言も登場する。
婚活パーティで68歳の男性と知り合った59歳女性は、一度だけ一緒に映画に出かけ食事をした後、交際の申し込みを受け、それを断った。しかし男性からの 熱烈アプローチは止まず、連日の電話攻撃を受けるハメに。それも一切無視するようにしたところ「本人と数日連絡が取れない」と通報した男性により、女性の 自宅にパトカーと救急車が出動する事態となった。
20歳巨乳ファミレス店員は、常連の白髪頭の60代後半とおぼしき男性からのストーカー 被害にあった。コーヒーのおかわりや追加注文で彼女だけと話をしたがり、彼女がレジにいるタイミングを見計らって会計をする。そして勤務後に従業員出入口 から出てくる彼女を待ち伏せするように。しまいには、どうやって探し出したのか、女性のブログまでウォッチされ、彼女が居酒屋での様子をオンタイムでアッ プした直後、店に花が届いた。
実は、作者自身もこの高齢男性の欲望の標的になっている。なんと取材を続けるなかで取材対象者の高齢男性3人が"シニアストーカー"に変貌、彼らから鬼電、鬼メールを送られまくるという事態に発展したのである。
1人目、69歳のAさんは自宅マンションのローンも完済しており、孫もよく遊びに来る。携帯電話の待ち受けは4歳になる孫娘。しかし話を聞くと「バブル全 盛の狂乱時代、彼は都内に洒落たカフェバーを3軒展開し、大変羽振りがよかった」と典型的な"バブルの成功体験"を持っており、しかも、「バブル崩壊とと もに暗転。店は1軒のみ残せたが、経営は超低空飛行が続いた。閉店時にはおよそ1000万円の借金が残った」という。これまた典型的な"バブルのあおり" を受けていた。
当時、家庭を顧みることがなかったツケもあって、子供たちからは軽蔑され、家には居場所がなかった。そんなときに作者から 取材を受けたのであるから、舞い上がってしまったのだろう。「〈今日は日本橋まで歩いてきました〉〈皇居の二重橋がきれいです〉など、『散歩しかすること がない』日々の日記」や、「今、自分がどこにいて何をしているか、つぶさに行動記録」したものがオンタイムで送られてくるメール地獄に陥ってしまう。
2人目、80歳を超えたBさんは初対面から3時間で「あなたはラッキー。私には今、たまたまカノジョがいないの。出会えたのは運命。一緒に暮らしません か」とシワシワの手を添えて告白してきたという。さらには艶っぽい声で「あなたもまさか、取材だけで私に会いにきたわけじゃないでしょう」と囁いてきたと いうのだ。
その気はないと丁重に断ったうえ、会うのは今日で最後だと告げたにもかかわらず、「〈今週末に箱根までドライブはいかがです か?〉〈○○のコンサートをご一緒できればと思います〉など、1~3日おきにお誘いメールが来る」事態に。"迷惑で気持ちが悪い"と、はっきりと断ると 「元気で長生きの秘訣はね、物事を自分の都合のいいように解釈すること」とまったく懲りた様子がない。
3人目のCさん(74歳)は作者の 取材時、賃貸アパートで20年近く一人暮らしをしており「『来客は久しぶり』と、押し入れから防虫剤の臭いのする客用座布団を取り出して勧めて」きた。早 い昼食をごちそうになりバス停まで見送ってもらったがその翌日から電話攻撃が始まった。3日目からは1日に5回以上、電話が鳴るように。
「と りあえず出ると、とりとめもない話を一方的に続けられる。途中で遮って『忙しいし、もう話す事もない』と告げると、『迷惑かけちゃったね、ごめんね』と 言って切るのだが、ホッとしたのもつかの間、30分~数時間後に再びかけてきては、『どうしてるかな、と思って』と続く」......完璧にストーカーと 化してしまったのだ。
留守電にも「一段落したら電話してくださ~い。待ってま~す」と何度も吹き込まれるように。作者は意を決して「もう 二度とかけてこないでほしい」と強い調子で通告し、翌日から電話を不通状態にした。そして、4日間の海外滞在から戻ると......なんと「留守電に50 件を超す"声"が吹き込まれていた」という。
人間は老いて生殖能力がなくなっても、肌の触れ合いなどのコミュニケーションの一環として性的欲求が存在し続けるという。「老いて心は寂しさで満たされ、体は性に飢える一方であれば、『生涯現役』であり続けるのは苦行の道に他ならない」と作者は憂う。
しかし、こうした状況に陥っているのは、もっぱら男性たちなのだ。仕事をリタイアすることで、社会との関わりが極端に少なくなり、配偶者に先立たれたり離別されれば、孤独はいっそう強まる。体は老いてゆくのに性的欲求は残り続けていくのであれば、それが充足されない渇望も日々大きくなり、現実と理想の ギャップは開いてゆくばかりだ。
対する女性は、配偶者の離別や介護などをきっかけとして、現実に女を取り戻し、どんどん前向きになっていくケースも少なくない。その様子は、長年、夫と家庭を支え、抑圧されてきた女たちの反乱のようにも見えてしまうのである。
(高橋ユキ)
現代日本では高齢者の仲間入りをしてからも人生はまだまだ続くのだ。そんな高齢者たちの、あまり報道されない裏の部分を取材したのが『老人たちの裏社会』(新郷由起/宝島社)だ。
万引き常習、DV、暴行事件、孤立死......。さらに、同書には、老いてもなお衰えることのない性欲を持て余す高齢者たちの姿も描かれている。たとえ ば、それが現れているのが、婚活パーティ。パートナーに先立たれた高齢者が低予算で気軽に異性と出会えるパーティは自治体や民間が主催して各地で開催され ているが、セックス目的の参加も少なくないらしい。
とくに男性はその傾向が強く、作者が潜入したシニア婚活パーティは、女性は50代半ば から60代が中心、男性陣で60~70代だったが、「夫婦生活は極めて重要」と話す男性が非常に多かったという。一方、女性の側は「60過ぎたらアッチの 方は考えないわよ」という意見も多く、すれ違いが生じているケースも少なくないらしい。参加者の中にはこんな体験談を語る女性たちもいたという。
「二度目の食事の後で『二人だけになれる所へ行きましょう』と誘われたけど、『もう少し飲んでいたい』とやんわり断ったら、サッサとお勘定して出て行っちゃってそれっきり。結局、男はいくつになってもカラダ目当てなのかしら」(64歳女性)
もっとも、女性のなかにも年老いてセックスの歓びに目覚めたケースはある。本書には62歳でホテヘル嬢デビューを果たした女性も登場する。小柄で細身の小 池美幸さん(63・仮名)。15年近くセックスレスの夫は、近年、病が進行し、下半身が不自由に。そんなある日、ふと手に取った女性誌のセックス特集を読 んで、カーッと体が火照り出した。
「ものすごく久しぶりの感覚で、自慰までしてしまった。我に返ってから『このまま、主人しか知らずに女の人生を終わりたくない!』との気持ちがお腹の底から湧いてきたんです」(美幸さん)
その勢いに任せ、広告ページに載っていた風俗店に電話をかけて、初勤務へと至る。温和な上得意客に当たり、不安も吹っ切れた。最近は週に1~2回、夫のデイサービス利用の合間に「女を取り戻している」そうだ。
一方、高齢男性をターゲットにして金を稼ぐ"後妻業"ばりの女性もいる。3000万円ものカネを貢がせたのは68歳で離婚歴2回の吉川輝子さん(仮名)。 しかも、体の関係はナシで、だ。きっかけは6年前。腰の手術で入院した際、病棟で一回り年上の男性と親しくなった。相手はバツイチで子供とも疎遠。輝子さ んに入れあげてしまい、先に退院してからは足しげくプレゼント持参で見舞いに来るようになったという。
「モノなんていくらもらっても、この 歳になると嬉しくなんかないのよ。好みでもないノーブランドのバッグなんて、転売もできずにゴミになるだけ。年を取るほど先立つものしか必要じゃないし、 欲しくなくなる。だから『商品代金の分、いくらかでも現金の方が嬉しいわ』って本音を漏らしたのね」
すると翌日には現金10万円入りの封筒を渡されたのだ。
「大喜びよ!貯金を切り崩す生活だったから、『ものすごく助かるわぁ』って、思わず涙ぐんじゃったのよねぇ」
元生保レディの輝子さん、マメな電話やメールでのやり取りもお手のものらしく、こんなテクニックを同書で披露している。
「と にかく、いい気分にさせるのよ。上手に話を聞いて、認めて、褒めて、『あなたはほかの男性とは違う』と、自尊心をくすぐるの。そして、たまには母親のよう にして少しだけ叱ってあげる。若い娘のように、わざとスネてみせる。あとは多少の手料理で十分よ」と、テクニックを披露。「小金を抱えて使い道のないジイ さんなんて、ごまんといるのよ。ちょっとの笑顔で10万、20万出すのなんて屁にもならない。100万や200万なら『仕方ない』で済む相手だってね。少 し痛い目を見ても、男は見栄っ張りだから決して自分が『騙された』とは思いたくないのよ。そのさじ加減、欲張り過ぎずに恨まれない程度の金額の見極めが肝 心」
このコメントを読んでいると、逆に寂しい高齢男性が世に溢れている現状が見えてくる。1万件におよぶ死後の整理に関わってきた遺品整理専門会社「キーパーズ」代表の吉田太一氏によれば、孤立死の多くが男性だという。
「多 くの中高年男性にとって、離婚や死別による伴侶との別れは、文字通り生命線を断たれるのと同じ。なかでも今の60~70代は高度経済成長期にがむしゃらに 働いてきた世代で、プライベートに費やした時間が乏しい。家事や子育ては専業主婦の妻任せで、子供との繋がりも薄く、仕事以外での社会性が培われていない 場合が少なくない」(吉田氏)
男性が年老いてなお、女性を求めている背景には、前述した性欲ももちろんあるだろうが、一番大きいのはこうした孤独への恐怖ではないだろうか。前述の婚活パーティでも、男性の参加者には「女が生活の面倒を見て当たり前」という意識が根強いと作者は分析している。
男性は、ストーカーに走るケースも少なくない。同書には、高齢者のストーカー被害にあった女性の証言も登場する。
婚活パーティで68歳の男性と知り合った59歳女性は、一度だけ一緒に映画に出かけ食事をした後、交際の申し込みを受け、それを断った。しかし男性からの 熱烈アプローチは止まず、連日の電話攻撃を受けるハメに。それも一切無視するようにしたところ「本人と数日連絡が取れない」と通報した男性により、女性の 自宅にパトカーと救急車が出動する事態となった。
20歳巨乳ファミレス店員は、常連の白髪頭の60代後半とおぼしき男性からのストーカー 被害にあった。コーヒーのおかわりや追加注文で彼女だけと話をしたがり、彼女がレジにいるタイミングを見計らって会計をする。そして勤務後に従業員出入口 から出てくる彼女を待ち伏せするように。しまいには、どうやって探し出したのか、女性のブログまでウォッチされ、彼女が居酒屋での様子をオンタイムでアッ プした直後、店に花が届いた。
実は、作者自身もこの高齢男性の欲望の標的になっている。なんと取材を続けるなかで取材対象者の高齢男性3人が"シニアストーカー"に変貌、彼らから鬼電、鬼メールを送られまくるという事態に発展したのである。
1人目、69歳のAさんは自宅マンションのローンも完済しており、孫もよく遊びに来る。携帯電話の待ち受けは4歳になる孫娘。しかし話を聞くと「バブル全 盛の狂乱時代、彼は都内に洒落たカフェバーを3軒展開し、大変羽振りがよかった」と典型的な"バブルの成功体験"を持っており、しかも、「バブル崩壊とと もに暗転。店は1軒のみ残せたが、経営は超低空飛行が続いた。閉店時にはおよそ1000万円の借金が残った」という。これまた典型的な"バブルのあおり" を受けていた。
当時、家庭を顧みることがなかったツケもあって、子供たちからは軽蔑され、家には居場所がなかった。そんなときに作者から 取材を受けたのであるから、舞い上がってしまったのだろう。「〈今日は日本橋まで歩いてきました〉〈皇居の二重橋がきれいです〉など、『散歩しかすること がない』日々の日記」や、「今、自分がどこにいて何をしているか、つぶさに行動記録」したものがオンタイムで送られてくるメール地獄に陥ってしまう。
2人目、80歳を超えたBさんは初対面から3時間で「あなたはラッキー。私には今、たまたまカノジョがいないの。出会えたのは運命。一緒に暮らしません か」とシワシワの手を添えて告白してきたという。さらには艶っぽい声で「あなたもまさか、取材だけで私に会いにきたわけじゃないでしょう」と囁いてきたと いうのだ。
その気はないと丁重に断ったうえ、会うのは今日で最後だと告げたにもかかわらず、「〈今週末に箱根までドライブはいかがです か?〉〈○○のコンサートをご一緒できればと思います〉など、1~3日おきにお誘いメールが来る」事態に。"迷惑で気持ちが悪い"と、はっきりと断ると 「元気で長生きの秘訣はね、物事を自分の都合のいいように解釈すること」とまったく懲りた様子がない。
3人目のCさん(74歳)は作者の 取材時、賃貸アパートで20年近く一人暮らしをしており「『来客は久しぶり』と、押し入れから防虫剤の臭いのする客用座布団を取り出して勧めて」きた。早 い昼食をごちそうになりバス停まで見送ってもらったがその翌日から電話攻撃が始まった。3日目からは1日に5回以上、電話が鳴るように。
「と りあえず出ると、とりとめもない話を一方的に続けられる。途中で遮って『忙しいし、もう話す事もない』と告げると、『迷惑かけちゃったね、ごめんね』と 言って切るのだが、ホッとしたのもつかの間、30分~数時間後に再びかけてきては、『どうしてるかな、と思って』と続く」......完璧にストーカーと 化してしまったのだ。
留守電にも「一段落したら電話してくださ~い。待ってま~す」と何度も吹き込まれるように。作者は意を決して「もう 二度とかけてこないでほしい」と強い調子で通告し、翌日から電話を不通状態にした。そして、4日間の海外滞在から戻ると......なんと「留守電に50 件を超す"声"が吹き込まれていた」という。
人間は老いて生殖能力がなくなっても、肌の触れ合いなどのコミュニケーションの一環として性的欲求が存在し続けるという。「老いて心は寂しさで満たされ、体は性に飢える一方であれば、『生涯現役』であり続けるのは苦行の道に他ならない」と作者は憂う。
しかし、こうした状況に陥っているのは、もっぱら男性たちなのだ。仕事をリタイアすることで、社会との関わりが極端に少なくなり、配偶者に先立たれたり離別されれば、孤独はいっそう強まる。体は老いてゆくのに性的欲求は残り続けていくのであれば、それが充足されない渇望も日々大きくなり、現実と理想の ギャップは開いてゆくばかりだ。
対する女性は、配偶者の離別や介護などをきっかけとして、現実に女を取り戻し、どんどん前向きになっていくケースも少なくない。その様子は、長年、夫と家庭を支え、抑圧されてきた女たちの反乱のようにも見えてしまうのである。
(高橋ユキ)
はっきり言っておかねばならない。
歳相応に成長しなければならない。男性はある意味、世の中にちいさいころあまりもまれたことがない。だから、ちょっと突かれたら過剰反応する。ひきこもりで圧倒的に多いのは男性と言われるのも当然であろう。
だからこそ、30代から男性は会社とは違う肩書を社会貢献活動で作っていくべきなのだ。社会貢献と言っても何もそう難しく考える必要はない。特技を活かす社会貢献もある。例えばNPOの会計を支援するのも立派な社会貢献だ。今では80歳のシニアでも活き活きとしていて、NPOを立ち上げているのだ。
そういう方向に社会を持っていくべきなのは明らかで、五輪なんかやっている暇はない。今すぐに五輪開催権を潔く返納すべきだ。