2013年10月23日水曜日

不正を考えよ-日本にはびこる病巣-

 この日本という国は不正の国である。
サッカー選手でブーツを万引きして捕まった奴もいるが、それ以上に悪いのは公権力を堂々と私物化して捕まらない奴だ。許していいわけがない。

2011年11月16日
テロの帝国 アメリカ

 今回の書評欄はノーム・チョムスキーの「テロの帝国 アメリカ」(明石書店)を取り上げる。
 この書籍は非常に斬新な切れ口である。何よりも注目すべきは、チョムスキーがユダヤ人でありながらも、イスラエルを厳しく批判していることだ。中東問題を読み解くには、この本は避けては通れないのである。チョムスキーは、われわれの側と彼らの側とで、ほとんど同質の行為が、テロ/邪悪極まりない行為になったり、正当な防衛行為/正義となったりするという構造を、80年代の中東を中心に読み解いていく。
 ゆえに、メディアのバイアスのかかった報道を私は信じるなと何度も繰り返してきた。何しろ、オリンパスの不正でも「解禁待ちジャーナリズム」(評論家の奥村宏氏曰く)ぶりをまたしても発揮したではないか。独裁者の菊川を厳しく批判したメディアが月刊テーミス、週刊金曜日だけだと言うのには驚きを禁じえない。
 この本はアメリカのお間抜けネオコン一派に支配されたオバマ「政権」を厳しく批判するにも役立つ。そのための象徴的なせりふはこの通りだ。

アレキサンダー大王が海賊を捕らえて尋ねた. 「なぜ海の安寧を乱すのか」.
海賊は答えた. 「あなたこそ何故世界の安寧を乱すのか。私は小さな船一艘でやるだけだから盗賊と呼ばれるが、あなたは大規模な海軍を使ってやり、帝王と呼ばれる」

 私は歴史を「His Story」になりやすい危険性があると指摘してきた。
 Hisというのは支配者を意味する。Historyとは事実のみしかない。つまり、支配者によって歴史は絶えず書き換えられてきたのである。それを阻止するのがジャーナリズムなのだ。


http://www.amazon.co.jp/%E3%83%86%E3%83%AD%E3%81%AE%E5%B8%9D%E5%9B%BD-%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB-%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%A0-%E3%83%81%E3%83%A7%E3%83%A0%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC/dp/4750316881

2011年11月24日
穢れた銀行
 今回は木村勝美著『けがれた銀行』(イーストプレス)を取り上げる。
 三井住友銀行の前身である住友銀行の恐るべき腐敗を、木村氏は厳しく暴いている。あの旧平和相互銀行の乗っ取り事件の実態も、裏もなにもかも暴いている。
 更に住友銀行が闇の組織と手を組み、ドンドンダーティーになっていく実態を木村氏は取材で明らかにしている。そこにコメルツ銀行、ナットウェスト(現RBS)が絡むなんとも奇っ怪な実態に、驚きを隠せない。
 ちなみに私は三井住友銀行には口座を持たないし、つくりたくない。何故なら、住友銀行のダーティーな実態に嫌気がさしているからだ。それなら、三菱東京UFJを維持したほうがいい。それで、三菱東京UFJをメインバンクにしているのである。三菱も結構やることはやっているが、NYSEに上場して、情報公開をしているからだ(アメリカでも大手のモルガン・スタンレーに20%出資し、事実上傘下にしていることもある)。
 住友のアコギさはUFJの買収騒ぎでも明らかだ。三菱東京と合併を決めたUFJに住友信託と共同で買収を提案し、拒否されたら裁判所で騒ぎ立てる。この悪ぶりは住専問題でも発揮された。すなわち、不良債権になること請負の会社の融資を住専やあのイトマンに押し付けたのだ。
 それで嫌な目にあったのがあのトヨタ自動車である。経営危機にあった時、住友銀行に融資を頼んだら拒絶されたそうで、『雨が降ったら傘を取り上げて雨が上がったら傘を押し付ける』社風にトヨタ自動車の経営陣は反発した。それがもし、あの道路を倉庫がわりに使うカンバン方式につながったとしたら、住友銀行の罪は重い。
 さらに今回、追加記事を出す。週刊メールジャーナルのバックナンバーから引用する。

http://www.mail-journal.com/20000920.htm

住友銀行と暴力団の癒着を暴露、告発本の凄い中身/4件の怪死事件と竹下登
                    経済ジャーナリスト 中野 忠良

 木村勝美の「住友銀行の黒い霧」に続いて、「穢れた銀行」(ともにイーストプレス社)が刊行になった。前著は、神戸プレジデントゴルフ倶楽部、住宅信販、北新宿に対する不正融資と暴力団の関係を酷明に暴露したもので、後著は“金屏風事件”(昭61年)“青葉台支店巨額浮き貸し事件”(平2年)“イトマン事件”(同3年)“住商・銅不正取引事件”(同8年)に登場した人物群と法務省・検察庁との癒着による不祥事のもみ消しの実態を明らかにしている。
 川崎定徳の佐藤茂(竹下登に近く、金屏風事件に深く関与したとされる)が平成6年8月に死去した前後に4人が怪死している。まず、新右翼の野村秋介が平成5年10月に自殺、次いで亜細亜民族同盟会長の佐野一郎がホテルの屋上から飛び降り自殺(他殺の疑いあり)そしてジャーナリスト・堀川謙三の怪死(六本木の路上を歩いている途中、何者かに鉄パイプで殴られ、数カ月後に事務所の階段から転げ落ち蜘蛛膜下出血で死亡)している。

●住友銀行の“ウラ総務”住宅信販と闇世界

 野村秋介は、住友銀行の“ウラ総務”といわれる住宅信販の桑原芳樹を通じて50億円を引き出し、娘婿に九州・宮崎でホテルを経営させている。
 野村、佐野、堀川の死は捜査の対象にもならず“闇から闇”に葬られている。また、「住友銀行の黒い霧」の著者・木村勝美によると「穢れた銀行」を書くために取材協力してくれた不動産会社の大野泰弘が銀座で暴力団に襲われ拉致された上に肋骨6本を折る暴行を受ける事件が起きた。(平成11年9月13日)
 大野は日大駿河台病院に収容され、神田署の捜査員に事情を話したが、警察は動かず、新聞報道もされなかったのである。
 「住友銀行のカネはウラ総務役の桑原を通じて闇の世界へ流すことによって、彼らを住銀のガードマン役に仕立ててきた」(木村勝美著「住友銀行の黒い霧」より)
 というが、住銀と暴力団との関係の深さは周知の事実だ。とくに関西を拠点とする広域指定暴力団の直系組織との“密接な関係”が同書によって暴かれている。

 最近では吉本興業のMBOで不可解な融資を行い、MBOに反対した三菱東京UFJを切り捨てる暗躍を見せた。このままでは三井住友銀行はダーティバンクのままである。オリンパスのような不正はありえると見ていい。


2011年12月25日
西武を潰した総会屋
 今回の書評は西武を潰した総会屋 芳賀龍臥 狙われた堤義明(平井 康嗣 (著))を取り上げる。
 この総会屋は堤義明の闇を知っていた。しかも、漫画のような絶対君主として振舞ってきた堤が隠してきた西武鉄道の株式に関する秘密を握って脅したのであった。

テレビ・新聞・雑誌が書けない衝撃のノンフィクション。
堤義明・逮捕で闇に葬られる本当の重大事件がここにある。

マスコミ面会不可の大物総会屋・芳賀龍臥。04年8月、彼の死の病床で今回の西武・堤王国の崩壊の主因となった総会屋利益供与事件を週刊誌記者が直接取材。芳賀の死後、週刊誌記者がつきとめたのは、西武と警察が闇に葬った不正な土地売買の数々だった……。

佐高信氏(評論家)による推薦文
「まばゆい光だけを浴びてきたような堤義明が倒れたのは、闇の世界を生きて黒ヤギと呼ばれた男と関わったことによってだった。伝説の総会屋、芳賀龍臥の知られざるこの証言がはじめて堤帝国の実態を明かす」
アマゾンより引用

 しかも、この本では隠れた主役が出てくる。小泉純一郎である。
 ゴシップ系のニュースで恐縮だが、小泉は堤から森善朗ともども支援を受けてきた。そしてあるブログではこのような怪文書が公表されている。


「 臨時ニュース 第131号
 ー堤義明逮捕で震撼する小泉政権ー

飯島勲総理大臣秘書官が西武鉄道株の売却に関与
 証券取引法違反容疑で西武グループの総帥・堤義明を逮捕した東京地検特捜部は、このほどコクド関係者から小泉純一郎総理大臣の飯島勲秘書官がコクド保有の西武鉄道株の売却に関与していたという情報を入手、関心を示している。関係筋が明らかにした。
 関係筋によると、2004年8月下旬、飯島勲秘書官は常宿の赤坂プリンスホテル(東京都千代田区)内の料亭「紀尾井」で山口弘毅プリンスホテル社長から西武鉄道株の売却に苦労していると打ち明けられ、大阪に本社を置く大手繊維メーカー3社の交渉外担当取締役に電話で株の購入を強く働きかけた。
 その結果、3社のうち1社は再生機構入りしているとの理由で難色を示していたが、2社はいずれも態度を一転、山口社長に要請に応じる意向を示し、その後購入手続きを取った。
 山口社長は堤前会長からプリンスホテルと取引先の在阪企業10社への株式売却をノルマとして命じられ交渉を開始したが、うち5社が返答を保留し、前記の3社が難色を示していた。
 堤前会長から成約の遅れを叱責された山口社長は、自分の力では限界があると判断、懇意にしている飯島秘書官に相談することにした。
 山口は前記の「紀尾井」で、飯島秘書官に頭を深々と下げて、協力を要請したという。
 飯島秘書官は3社のうち2社の渉外担当取締役とは面識があり、翌日、電話で要請した。
 東京地検特捜部は05年3月下旬から本格捜査に乗りだし、山口社長など関係者への事情聴取を開始する模様だ。
 山口社長は無論、飯島秘書官に対する任意の参考人聴取も実施され、飯島秘書官の株式売却の関与がインサイダー取引の幇助に該当するかどうか、慎重に精査を行うものと見られる。
 飯島秘書官による「インサイダー疑惑」が明るみになれば西武事件が小泉政権を巻き込む一大政界疑獄へと発展することは必至である。政局は4月にも、大きな山場を迎えることになろう。

 小泉総理と堤義明の癒着
 堤義明と小泉総理の親密な関係は、小泉総理に横須賀プリンスホテル県政津に便宜を図ってもらって以来、続いている。
 総理に就任した01年4月から05年2月末まで、プリンスホテルに足を運んだ回数は300回に上ると言われている。公務による利用のほか、会食、静養、映画鑑賞までもプリンスホテルを利用している。
 もともと、小泉総理の所属する清和会(森派)事務所が赤坂プリンスホテル別館にあることから手馴れているのは確かだが、以前からあまりにも頻繁に利用し過ぎているのではないかと指摘されていた。
 堤前会長の近である山口社長は、堤前会長から小泉総理に対しては全面的に便宜を図るよう指示されていた。
 余談だが、前会長から全幅の信頼を受けていた山口社長は、前会長を裏切ったとしてコクド社内からインターネットなどで告発されている。
 山口社長は前会長が逮捕された段階で引責辞任しなければならないにもかかわらず依然として居直り続けている。腹を切るどころか、名義を貸したに過ぎない株券の所有権を主張、そのうえ東京地検特捜部の捜査からも逃げ回るなど、醜態をさらしている。
 そのために山口社長の代わりに引責辞任した横尾彪コクド前専務が泥をかぶっているという。
以上 」
http://officematsunaga.livedoor.biz/archives/17567239.html

 この怪しげな文書の真偽はわからない。
 しかし、小泉が稲川会系の暴力団との関係を持っていることが明らかになっていることからして、否定はできないのだろう。マボリ・シーハイツなる西武が開発したマンションの街開きを祝うイベントに参加したのだから。
 こんな男を我々は改革者として祭りあげてしまったことを恥じねばならない。


http://www.amazon.co.jp/%E8%A5%BF%E6%AD%A6%E3%82%92%E6%BD%B0%E3%81%97%E3%81%9F%E7%B7%8F%E4%BC%9A%E5%B1%8B-%E8%8A%B3%E8%B3%80%E9%BE%8D%E8%87%A5-%E7%8B%99%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%81%9F%E5%A0%A4%E7%BE%A9%E6%98%8E-%E5%B9%B3%E4%BA%95-%E5%BA%B7%E5%97%A3/dp/4872902211

2012年04月01日
共生者
 
 共生者とは、暴力団と共生する者の事。暴力団関係企業以外にも、暴力団に資金を提供したり、暴力団から資金の提供を受けて、その資金を活用して運用した利益を暴力団に還元する人たちのこと。表向きは暴力団との関係を隠しながら、その裏で暴力団の資金獲得活動に協力したり、便乗したりして、暴力団の威力、情報力、資金力等を利用して、自らの利益拡大を狙い、悪事を働く。

 「共生者 株式市場の黒幕とヤクザマネー」松本弘樹著を読ませてもらって一言で言うならば、以前述べた投資家と投機家の違いの正しさを実感したわけだ。
 ソフトバンク(SBIホールディングス)、ワールド、キムラタン、シルバー精工(破産)、ジャックホールディングス(現カーチスホールディングス)、LTTバイオファーマ(破産)、NOVA(破産)など、この本では株式市場を騒がせた企業が出てくる。当然、山口組の幹部も出てくるわけだ。
 株式とは何か。利益を生み出すものに過ぎないのだ。だが、あまりにもあこぎなことをすれば裁かれるのだ。今までの日本はそれが甘かった(ライブドアに関してはなぜか極端に厳しかったが)。だが、オリンパスの不正な経理操作でそれは通用しなくなった。私はオリンパスの上場を廃止すべきだと何度も指摘してきた。本当の投資家ならば倫理に従ってオリンパスの上場廃止を要求する。
 そうした人たちこそが私が以前書いた投志家なのである。私は彼らを支えるが、ライブドアの旧経営陣に私財を要求した投機家どもには断固として刃向かうとだけ断言する。リスクを背負うべき応分責任を果たしなさいといいたいだけである。

http://www.amazon.co.jp/%E5%85%B1%E7%94%9F%E8%80%85-%E6%A0%AA%E5%BC%8F%E5%B8%82%E5%A0%B4%E3%81%AE%E9%BB%92%E5%B9%95%E3%81%A8%E3%83%A4%E3%82%AF%E3%82%B6%E3%83%9E%E3%83%8D%E3%83%BC-%E6%9D%BE%E6%9C%AC%E5%BC%98%E6%A8%B9/dp/4796663304

2012年06月02日
インサイダー取引は正統な取引ではない
WRAPUP2: 増資インサイダー、旧中央三井とあすかに課徴金納付命令を勧告=監視委
2012年 05月 29日 20:20 JST
*野村証券の会社コメントや監視委のスタンスなど補足情報を加えました。

 [東京 29日 ロイター] 証券取引等監視委員会は29日、旧中央三井アセット信託銀行(現三井住友信託銀行)とあすかアセットマネジメントに対し、課徴金を科すよう金融庁に勧告したと発表した。検査の結果、運用担当者が公募増資の情報を会社の正式発表前に入手し、金融商品取引法で禁じられているインサイダー取引をした疑いがあると判明した。これにより増資インサイダーをめぐる課徴金納付命令の勧告は、3件目となる。
 旧中央三井アセットの運用担当者による増資インサイダー取引が判明したのは2件目で、伝えられた未公表の増資情報は2件とも野村ホールディングス(8604.T)傘下の野村証券からの伝達だとわかっている。監視委は野村に対し、情報管理体制を点検する特別検査に入っており、不備が認められれば厳しく対処する方針だ。
 旧中央三井アセットの運用担当者は、2010年に行われたみずほフィナンシャルグループ(8411.T)の公募増資における主幹事証券会社の営業担当者から事前に募集勧誘を受けた。その上で、保有していた現物株を売り、株価が下がった段階で公募増資に応募し、株価下落で発生する損失を最小限にとどめていた。旧中央三井に対する課徴金は8万円。
 企業の増資情報を事前に使ってインサイダー取引を行う「増資インサイダー」問題をめぐって、旧中央三井が課徴金納付命令を受けるのは2回目。同社の別の運用担当者は3月、国際石油開発帝石(1605.T)(INPEX)の増資に関する情報をもとにインサイダー取引をし、5万円の課徴金を納付する処分を受けていた。
 29日会見した監視委幹部は、こうして複数の増資インサイダーが行われていたことが明らかになり、「わが国の市場の透明性・公正性に資することだと思っている」と述べた。また、他の事例について、今後も引き続き調査を進めていることを明らかにした。
 監視委はこの日、みずほFGの情報を事前に流した証券会社名は明言せず、主幹事である「グローバルコーディネーターの1社から流れた」とは述べるにとどめた。漏えい元は、上司と部下の関係の男性2人だったという。
 複数の関係筋がロイターに明らかにしたところによると、増資情報は、野村証券から事前に流れたことがわかっている。野村は同日、「監視委の検査と調査に全面的に協力する」とのコメントを発表。すでに社外の弁護士が広範な調査をしており、事実関係や要因分析に基づいて改善策や人事処分などの意見を受けるとし「監視委の検査結果や弁護士からの提言などを踏まえ、厳正に対処する」との方針を示した。
 一方、あすかAMは空売りを頻繁に運用に使うヘッジファンド運用をしており、もともと日本板硝子(5202.T)株式を保有していなかった。運用担当者は、公募増資で需給が緩んで株価が下がると想定した上で、日本板硝子株式を借りて売りつける空売りを行った。その後、新株を応募して購入し、借株を返還することで利益を得た。
 あすかAMに対する課徴金は13万円。 
 日本板硝子の公募増資の主幹事(グローバルコーディネーター)は旧大和証券キャピタルマーケッツ(現大和証券)とJPモルガンだった。
 複数の関係筋によると、情報を事前に流したのは、JPモルガンの社員だった。ある関係筋によると、この社員はすでにJPモルガンを退社した。
 JPモルガンは29日、当局から主幹事証券の社員が情報を伝達したと認定されたことについて「組織ぐるみでの関与だったとの指摘は受けていない」と発表した。JPモルガンは発表資料の中で、同社社員が関与したとは明確にしていない。
 (ロイターニュース 江本 恵美、平田紀之 編集:内田慎一)

 アメリカではインサイダー取引に対して非常に厳しい。
 1909年に合衆国最高裁判所がインサイダー取引禁止に関する法律を制定し、1964年にカナダのオンタリオ州ティミンズの鉱山をめぐるテキサス・ガルフ株不正事件を切っ掛けに、1984年には内部者取引制裁法で罰則が制定された。懲罰的賠償制度の一環として、インサイダー取引規制の違反者に対して、得た利益の3倍までの範囲内で民事制裁金が課されうることとなっている。
 この制裁は私も賛成だ。日本は特にあまりにも株がらみで不正なケースが多すぎる。どう見たって粉飾決算なのに処分されない不可解な実態である。ヤオハン、日興コーディアル証券(現SMBC日興証券)、楽天などグレーゾーンのケースが多い。
 罰金が8万円から13万円と言うのも不可解な話で普通だったら1億円が最低基準ではないのか。高額だと言うなら経営者失格もはなはだしい。「だったら最初からインサイダー取引をするな」といいたくなる。悪質な場合は免許取り消しだってあっていい。そこまでやってこそ、金融に携わる人間は身を清める事になる。
 大和銀行ニューヨーク支店巨額損失事件の犯人だった井口俊英氏は約1億5800万円の罰金と禁固4年の実刑を受けた。今はアメリカのアトランタにて小説家になっている。個人に1億円の罰金なのだから、法人が1億円を払いたくないと言うのは『ちやほやされて育ったお坊ちゃんが贅沢が出来ないと言って泣いている』(三菱重工業の中興の祖である飯田庸太郎氏の発言)のとどう違うのか、証明願いたい。

2012年08月05日
ザ・ハウス・オブ・ノムラ
 今回取り上げるのはアル・アレツハウザー著、佐高信監訳の「ザ・ハウス・オブ・ノムラ」である。
 あの野村證券は一時は、トヨタの純利益をすら凌いだ。アル・アレツハウザー(Albert Alletzhauser)は、イギリス系証券会社「ジェイムズ・ケイペル」東京支店に在勤中に本書を著している。「ガリバー」と呼ばれ、日本の証券市場に君臨する“ノムラ”に、いたく興味を引かれるも、実態に迫る本は見当たらない。そこで、数百人に及ぶ関係者の聞き取りをもとに、本書の構想を練った。
 出版時、野村の恥部を明らかにしたと評価された本書だが、それは甘い評価である。日本で翻訳版が出された際、当時の野村証券側(実際は大蔵省と信じられている)からクレームがついた部分、官僚の不正に触れた部分、日本航空と総会屋との関係について書いた部分など重要な箇所が削除されていた。イギリスで出版された原著について、野村証券は訴訟も辞さない構えを公表していたからである。さらにヤクザとの関わりなどあまりにも甘い。新潮社が止めたというのだろうか。
 私はニューヨーク・タイムズを思い出す。1971年にベトナムの「トンキン湾事件」(1964年)は、アメリカ軍部のねつ造だったことを示すアメリカ国防総省の秘密報告書ーー「ペンタゴン・ペーパーズ」を暴露した報道によって、ジャーナリズムの最高の名誉とされるピューリッアー賞を受賞した。副社長のジェームズ・レストンは事実を報道すると決めた際に「社をあげて政府と戦う。財政的にピンチになったら、輪転機を2階にあげて社屋の1階を売りに出す。それでも金が足りなければ、3階、4階、5階と社屋を売り、最上階の14階まで輪転機をあげるような事態になっても、タイムズは戦う・・・」と部長会で決死の覚悟を示した。
 日本のジャーナリズムにかけているのはそんな覚悟である。

2012年08月05日
エンロンの衝撃
 今回取り上げるのは奥村宏著「エンロンの衝撃」である。
 この作品はあのライブドア事件ばかりかカネボウ粉飾決算事件、日興証券不正会計事件など多くの経済犯罪の実態の構造を厳しく描いている。NTT出版にしては実にコクのある本である。私は経済再生には今の株式会社による方法ではなく協同組合型生産システムの導入を行うべきだと考えている。
 株式会社だと自ずと利益に走る。利益優先は悪くはないが、過剰な競争を生み出す。適切な競争が必要なのだ。奥村氏は会社評論家として活躍しているが、是非ともソフトバンク系列のサイバー大学の再建に関わっていただきたい。それだけの優れた見識を持った方なのだから。
 日本の経済システムは大量生産大量消費を前提にしてきた。だが、そんなものは今環境問題の前で大きくたじろいでいる。そんなシステムでいいのだろうか。もう一度考え直してもらいたい。
 
2012年11月25日
日本の政治を考える三冊の本
 どんなに華々しい世界であっても、実はかなりドロドロした世界がある。
 政治と芸能界と経済界だ。「東京地検特捜部」共同通信社社会部 (著)は東京地検特捜部の過去の活躍を描いている。「“正義”を追求するスゴイヤツらの熱き闘い逃げる政治家、追う地検特捜部。「不正を許すな!」……「土建屋政治」と揶揄されるゼネコン談合=政治家のカラクリに最強の捜査機関が徹底的に迫るドキュメント」というが、この本でツッコミが足りないなと思った箇所があった。
 CIAと東京地検特捜部の関係だ。東京地検特捜部の歴代トップは、全員CIAに留学しているという。それでCIAの工作員ではないかという疑惑がネットで囁かれている。そして安倍晋三氏へとつながる岸信介はその代表書くとも言われている。
 このことに対してもう少し角度を変えて突っ込んで欲しかったと思うのは私だけだったのだろうか?

 「沖縄―戦争と平和」大田 昌秀 (著)は「日本国民は、沖縄のことをどれだけ知っているのだろうか?「沖縄戦の教訓が、沖縄の伝統的な平和思想とともに日本国民の共有財産になってほしいと切実に望む」著者が1982年に書き下ろした、沖縄からのメッセージ。沖縄の過去と現在について知り、日本の未来を考えるために必読の入門書。」というだけあり、前・正統沖縄県知事であられた大田氏の力作である。
 この本を保守派はぜひとも読みこなし、その問題点を真摯に取り上げ、沖縄の痛みに向きあって欲しい。今のままでの対応では沖縄の民衆は反発するままである。この国は都合の悪いことをひた隠しにする悪い文化が根づいてしまった。
 私はそうした文化を強く憎む。事実と向き合ってこそ人は強くなれるのだからだ。

 最後に取り上げるのは「松下政経塾が日本をダメにした」八幡 和郎 (著)である。
 実は日本共産党の衆議院議員選挙に立候補を予定している清水ただし氏のTwitterにこんなのがあった。

http://goo.gl/icbjd
宣伝中に声をかけてきた初老の男性。聞くと松下政経塾で講師をしていたという。いまの塾生や卒業生の出来の悪さを嘆いてた。

 この本は松下政経塾がなぜ生まれたのかから始まり、その問題点を厳しく指摘している。野田自称首相、前原誠司、山田宏、原口一博、玄葉光一郎、樽床伸二、村井某、中田某といずれも問題だらけの欠陥政治家である。そうした連中に言えるのはみんな「気合だ気合だ」とあのアニマル浜口も顔負けの経済運営だ。
 更に問題点として言えるのは女性の塾員が少ないということだ。研修カリキュラムは政治学・経済学・財政学などの専門的なものから、茶道・書道・坐禅、伊勢神宮参拝など日本の伝統に関する教育、さらには自衛隊体験入隊・武道・毎朝3kmのジョギング・100km強歩大会といった体育会系的なものまで幅広く用意されている。だが、現実社会と向き合うという観点がここには欠けている。
 しかも、決定的な欠陥というべきなのは男性中心のカリキュラムだということだ。女性の存在は無視されているに等しいのだ。
 私は松下政経塾にかけているのは異端であると考える。松下幸之助を批判した佐高信氏を塾長にし、大学院として再出発するのもひとつのアイデアなのではないか。
 
この記事へのコメント
>共産党に必要なのは異端である。そして議論だ。組織が未だに硬直した革命という言葉にとらわれているようではいけない。

全く同感です。わたしも、筆坂氏の『日本共産党』を読みました。(笑)…
党を辞めた筆坂氏に対して、少なからずの日本共産党党員の方々からエールの便りが、筆坂氏に送られたそうですね。小野哲さんの、ご指摘通り、筆坂氏を擁護する意見なども党内で自由に発せられる風通しの良さが必要ですね。日本共産党の組織的体質改善は、まったなしです。 小野哲さんが、以前からご指摘の、査問や民主集中制などの党外部からは、陰湿なイメージに感じられるマイナスブランドとは訣別すべきでしょう。党の体質や党内議論などの透明化がなされれば、今よりは、広範な支持を得られるとわたしは、考えます。日本共産党の政策は、正しいことは、大半の有権者は認めるところでしょうが、支持が広がらないところは、小野哲さんのご指摘が、主因であると思います。 小野哲さん…、筆坂氏と一水会顧問の鈴木邦男氏との共著;『わたしたち日本共産党の味方です』という書籍も面白かったですよ。(笑) この様な外部ひとたちの党に対する建設的意見を傾聴する度量というか、寛容さを日本共産党という組織には求めたいものですね…。(笑)
Posted by 青い鳥 at 2012年11月25日 12:10

2012年11月26日
青い鳥さんへのコメント回答
 遅くなり恐縮ですがコメント回答とさせて頂きます。

 お久しぶりです。
 昨日人と会いまして、まさか宗教の勧誘だったのにはやられましたが今まで読んできた本の積み重ねで弾き返すことができてホッとしています。本人たちは悪意でやっていないのですが、その団体は勧誘や退会に問題を抱えているカルト団体と指摘されています。
 共産党がいまいち伸び悩んでいる背景にはカルト的な閉鎖性というのもありますね。ですから異端を恐れず受け入れることなんです。本物の思想ならば相手から飛び込み、ずっと関わっていくものです。自信がないから勧誘を行なっているんだということじゃないですか。
 また、カルトは自ら思考する力を破壊するようにマインドコントロールする傾向があります。そこで生み出された人間はまるで金太郎飴のようにどこを切っても同じようなものです。そこを踏まえて話をしていました。また、彼らの団体は脱原発・ガスコンバインドサイクルの導入を主張しているんですがなぜそうなのかという科学的な信念が欠落している印象を受けました。
 私は「このままの生活を維持するような話は通用しない、エネルギーの使い方や経済のあり方を見直すべきじゃないか」と指摘しましたが、三菱は今後アメリカで第10位を目指す金融機関になることを目指しているようです。その過程でモルガン・スタンレーとの経営統合はありうると見ています。
 その上で、小回りの効いた金融機関になるべきですね。例えば、東海地域については中京銀行など親密な銀行を経営統合した上で「三菱東海銀行」を立ち上げるのもひとつの知恵でしょう。理念は当然城南信用金庫でしょうが(これとても経営陣の内輪もめが背景にありました)。コミュニティ経済で日本は生きていくべきで新自由主義の延長線であるTPPは無理です。
 コメントのミスについては気にしていませんよ。まあ、来週にはハローワークにもう一つ書類を出す予定です。そこから本格的にハローワーク経由の正規雇用探しに入ると思います。


 なお、書評に関しましては近日中に三冊、医療関連と国際政治学に関して取り上げる予定です。
 パワーゲームという意味では共通しています。

2012年12月07日
迷宮のインターネット事件
 迷宮のインターネット事件という岡村 久道(弁護士)著の本をある街の図書館の無料本コーナーからもらって読ませていただいた。


 「技術革新を法律が半歩遅れで追いかける――。この果てしない「いたちごっこ」はいつまで続くのか。
 迷惑メールの元凶「出会い系サイト」にも法の網が及んだ。しかし,「半歩遅れ」が原因で,法改正まで一時しのぎに古い法制度が流用されることもある。明治時代に制定した「わいせつ物陳列罪」でのサイバーポルノ摘発に無理は生じないのか。
 新たな技術が普及しても,大規模システム障害などで安全に利用できなくなれば,便利さは一転して不便さへと転化する。不正アクセス,コンピュータ・ウイルス,スパイウェアなど,セキュリティに対する新たな脅威と被害に終わりはない。 コンピュータに蓄積された個人情報の大量漏えい事件が多発し,オープンなネットでは加速する。ネットを介した個人情報の無断収集技術も花盛りだ。オンラインで個人情報は守れるのだろうか。
 法廷で繰り広げられるネット紛争が急増し,紛争内容は次第に混迷の色を深めている。まさに,「迷宮」と呼ぶにふさわしい状況だ。そこで本書では,ネットをめぐるさまざまな攻防を「法律」をキーワードに描写した。
 ただ本書では,単に事件を紹介するのではなく,できる限り背景事情を解明するよう試みた。その意味では,あくまでも「法律」は解明のためのキーワードにすぎない。本書を通じて,今日のサイバー社会の「真実」を少しでも理解してもらうことができれば,筆者としては望外の喜びである。」筆者より

 この触れ込みにふさわしい内容だった。
 私はTwitterを使っていることもあって、ネットの情報の発信に関して色々と考えてきた。最近のネットでは著作権の無断侵害も目立ってきている。漫画にしても無断でオンラインストレージに載せられてダウンロードしやすい状況になってきている。
 では、そうしたものをどうやって解消すればいいのか。法律で禁止するばかりではなく、違法行為に手を染めなくてもきちんと購入できるようにするなど犯罪に走らずに住むケースを増やしていけばいいのではないか。正規雇用を増やす(当然、残業も事実上禁止する)ことは当然の政策だろうが、過剰なまでの労働力を他の産業にどうやって回すかも課題になる。
 サイバー経済はまだまだ始まったばかりで、その中でどうやって成長するかが問われている。