これは組織ぐるみの隠蔽ではないのか。世紀の新発見とされた「STAP細胞」論文について、理化学研究所(理研)の研究チームの一部スタッフが写真の流用疑惑について、調査委員会の外部有識者メンバーに「重要な問題」と説明していなかったことが判明した。このスタッフはおよそ1カ月前には問題の深刻さを把握していたというから、疑惑を矮小化しようとしたフシがある。
 理研は14日、小保方晴子ユニットリーダー(30)らのSTAP論文について、内部調査の中間報告を行った。「共同研究論文の作成の過程において重大な過誤があったことは甚だ遺憾」と、野依良治理事長が謝罪。論文に不適切な画像が使われていたとして、小保方さんらに論文の取り下げを求めたことを明らかにした。

■「真相究明」より「利権優先」と言われても…
  この論文で研究の核心部分のひとつとなる写真は、小保方さんの博士論文から流用された疑いが指摘されている。当然、研究の信憑性に関わる重要な問題のはずだが、論文の共著者で理研の笹井芳樹・副センター長は事態を把握しながら、調査委の外部メンバーに「単なる画像の取り違え」などと伝え、流用疑惑を十分に 説明しなかったという。

「小保方さんの同僚スタッフは内部調査に協力する気がないだけでなく、疑惑を組織的に隠蔽しようとしたとみられて も仕方ありません。小保方さん個人の意思よりも、世紀の発見を潰したくないという“組織の論理”を優先させたようにも思えます」(研究の倫理問題に詳しい 東大医科学研究所の上昌広特任教授)

 理研は政府から「特定国立研究開発法人」に指定される寸前だった。指定を受ければ国から巨額の予算がつき、国際的に優秀な「スター研究者」を億単位の報酬で招くことができる。政府は“小保方疑惑”を受けて指定を先送りしたが、理研の内部が指定欲しさに 疑惑を小さく見せようと組織隠蔽に走った可能性だって捨てきれないだろう。理研に問い合わせたら、「会見で聞いてください」とのこと。
 理研の会見に小保方さんは出席しなかった。前出の上氏は「小保方さん本人が事態を説明しなければ、組織が表に出ることを拒んでいる、とさらなる誤解を招くだけです」と言った。小保方さんは論文発表の責任を果たすべきだ。