2014年11月24日月曜日

リスクを踏まえて報道してほしい~アスペルガー症候群当事者として~

 実はとある日、私は薬局に行っていた。
 というのは、喉風邪をひいてしまい、市販の薬を買う為でもある。市販薬で私は決まって買わない会社がある、第一三共である。この会社はクロマイなる薬で幼い子供を死に至らしめ、民事訴訟でも経営陣どもが不誠実な言い逃れに終始し、金で遺族の頬をひっぱたく傲慢な解決方法を押し付ける犯罪行為をやらかしたからである。
 同じ薬害を犯してもきちんと謝罪した武田薬品、田辺三菱製薬、大正製薬よりも劣る。そこで、最終的に選んだのは大正製薬のパブロンだったが、私が服用している感情調整剤との飲み合わせも合わせて薬剤師に確認を取ってある。それほど薬というのはリスクがあるのだ。

 さて、こう警告したのだが、週刊ダイヤモンドが「画期的な報道」をしているようだ。

 「引きこもり」するオトナたち

東大らが「自閉症スペクトラム」への臨床試験開始
経鼻スプレーでコミュニケーション改善への期待

池上正樹 [ジャーナリスト]
【第220回】 2014年11月6日


表情や声色から他人の気持ちを読み取るのが難しいとされる「発達障害」のなかでも代表的な疾患といわれる「自閉症スペクトラム」。その主な症状は、対人コミュニケーションの障害で、人口の100人に1人以上という割合で認められながら、治療法は未だ確立されていない。
 この「自閉症スペクトラム」は2013年、「DSM」(米国精神医学会が出版している精神障害の診断と統計マニュアル)の第5版の診断基準変更に よって、これまで「自閉性障害」「アスペルガー障害」「特定不能の広汎性発達障害」と呼ばれていた疾患を統合したものだ。 「大人の引きこもり」には、こうして周囲に理解されずに個人の性格的な問題だと誤解され、孤立せざるを得なかった「自閉症スペクトラム」の人たちも数多く 含まれている。

東京大学ら4大学が発見
オキシトシン経鼻スプレーの連続投与の効果

東京大学など国内4大学の研究チームは、この「自閉症スペクトラム障害」の治療に対する、ホルモンの一種であるオキシトシンの有効性や安全性を確かめる臨床研究を進めてきた。
 その結果、これまでに少人数での経鼻スプレーの投与によって、「他者との信頼関係を築きやすくなる」「表情から感情が読み取りやすくなる」などの効果が得られたとして、7週間にわたる連続投与による臨床試験を11月からスタートすると、先月30日に会見した。
 臨床試験の結果によって、対人場面でのコミュニケーション障害に、オキシトシンを医療に用いた開発計画が進むことで、1人悩み苦しんできた当事者に新たな選択肢を提供できる可能性が期待されている。
 また、この臨床試験は、採算面などの事情から製薬会社が絡まず、当事者ニーズから“医師主導”によって個々の現場で取り組まれてきた臨床研究を国の委託研究として“大同団結”を実現させた、文部科学省の「脳科学研究戦略推進プログラム」の一環という意味でも注目される。
 会見を行ったのは、東京大学医学部付属病院精神神経科の山末英典准教授、名古屋大学医学部付属病院親と子どもの心療科の岡田俊准教授、金沢大学子 どものこころの発達研究センターの棟居俊夫特任教授(金沢大学子どものこころの診療科長)、福井大学子どものこころの発達研究センターの小坂浩隆特命准教 授といった「発達障害」を支援したり研究したりしている専門家に、文部科学省「脳科学研究戦略推進プログラム」の加藤忠史プログラムオフィサーを加えた5 人。

 臨床試験で用いられるオキシトシンは、脳から分泌されるホルモンで、女性の乳汁分泌や子宮収縮を促進する作用があり、日本では注射剤のみ認可されてきた。また、経鼻スプレー剤はヨーロッパで認可され、授乳を促す目的で使われている。
 その一方で、オキシトシンは、脳の中でも作用していることが指摘され、動物では、親子の絆を形成するうえでも重要な働きのあることが知られているという。
 これまで金沢大学の棟居特任教授らや福井大学の小坂特命准教授らの自閉症スペクトラムのそれぞれの症例で、オキシトシンの経鼻スプレーの長期連続投与によって、社会性障害などの症状が改善された可能性が報告されてきた。
 また、東京大学の山末准教授らは、自閉症スペクトラムがある40人の医師主導臨床試験で、オキシトシン1回の経鼻投与によって、他者の感情を理解する方法や、脳活動などが改善されたことを報告している。
 さらに、東京大学で20人の参加者に対して行われた6週間の連続投与の結果から、今回、120人の参加者を募集して臨床試験を行うことで有効性を検証できるという判断に至ったという。
 オキシトシンの安全性については、「誰でも体内にあるもの」であり、これまでの数百人の臨床からは「副作用の報告はない」という。

臨床試験は18~54歳男性を対象に
4大学で実施予定

当事者の間からは、「おそらく困っているのは、職場や家族なのだろう。(自分が発達障害という)自覚のない人たちには、どう呼びかけるのだろう か」といった課題を挙げる声があった。いまも自覚がないまま、「なぜ人間関係が上手くいかないのか」と1人で悩み苦しむ人たちに、こうした新たな医療を用 いた選択肢ができるという情報を伝えていくことも必要だろう。
 一方で、別の当事者から「人格に関係するのではないか」との指摘もあった。
 長期的投与によって、人格が変わるのか。会見で尋ねると、東大の山末准教授はこう答えた。

 「対人参加や、対人参加の積極性の面などで関与した場合、行動パターンが少し変化する可能性はあります。これからの検証事項だと思います」
 臨床試験の対象者は、「自閉症」「アスペルガー障害」「特定不能の広汎性発達障害」といった「自閉症スペクトラム障害」と診断され、「知的障害」 のない18歳から55歳未満の男性(気分障害、不安症などの併発精神疾患の病状が不安定、ADHD治療薬を服薬中などの条件に該当する場合は除く)。
 7週間にわたってオキシトシンをスプレーで鼻に噴霧し、対人場面でのコミュニケーションの障害という症状が改善するかどうかを検証する。
 臨床試験を実施する場所は、東京大学、名古屋大学、金沢大学、福井大学の各附属病院。試験は、2015年度中に終了する予定。
 当面は成人男性のみだが、ゆくゆくは、女性や子どもにも対象を広げていきたいという。
 募集期限は、2015年11月まで。詳細は下記の通り。
http://npsy.umin.jp/oxytocin.html
 応募・質問は、FAXまたはE-mailで受け付けている。
FAX番号:03-5800-9553
電子メール:oxytocin-project@umin.ac.jp(@は小文字に変換してください)
オキシトシン臨床試験募集事務局 (東京大学精神神経科)

 正直に言って、これはあまりいいとは思えない。
 あくまでも臨床実験なのである。それを希望の光であるかのように思ってはいけない。この報告を甘く見てはいけないのである。

オキシトシン

1 オキシトシンとは

一般名 オキシトシン
商品名及び企業名 アトニン-O注:製造販売元 あすか製薬株式会社、販売 武田薬品
オキシトシン注射液F:富士製薬工業株式会社
適応症 子宮収縮の誘発、促進ならびに子宮出血の治療の目的で、次の場合に使用する。
分娩誘発、微弱陣痛、弛緩出血、胎盤娩出前後、子宮復古不全、帝王切開術(胎児の娩出後)、流産、人工妊娠中絶
承認(薬価収載) アトニン-O注 1957年5月 再評価結果 1993年3月
オキシトシン注射液F 1995年12月

2 取り上げた経緯

当会議では、2000年に子宮頸官熟化剤「マイリス」について厚生省と学会に要望書を提出し、公開会議などを通じてマイリス問題を明らかにしてき た。一方で、子宮収縮剤の使用による事故も減少せず、裁判例も多い。陣痛促進剤による被害を考える会では、子宮収縮剤による事故を減らすために、厚生労働 省交渉等を通じて添付文書の改訂を要望しているが、放置されている。2006年に6月、厚生労働省は、日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会が発表した 「子宮収縮薬による陣痛誘発・陣痛促進に際しての留意点」の活用を臨床現場に通知した。そこでは子宮収縮剤の安全な使用方法を詳細に記述しているが、その内容が添付文書に反映されていない。 そこで、オキシトシン注の使用による血圧上昇、脳出血との関連性について調査し、問題点を明らかにして、必要な添付文書改訂等を求めることとした。

3 何が問題か

  1. (1) 添付文書の記載について
    米国におけるオキシトシンの添付文書「注意」欄には、高血圧及びクモ膜下出血による母胎死亡の記載があるが、日本の場合は、「その他の副作用」の欄に、 「静脈内注射後一過性の血圧下降、血圧上昇等」との記載しかない。国内において、オキシトシンの投与による脳出血の事例が報告されているが、患者が脳出血 の徴候を現す血圧上昇、頭痛、しびれの訴え、嘔吐の症状を呈していたにもかかわらず、担当医は脳出血を疑うことはなかった。医療現場において、添付文書の 記載が不十分であるために、オキシトシンの副作用として脳出血が発生することが十分認知されていない可能性がある。
  2. (2) 適応と投与方法
    オキシトシンに対する感受性は妊娠時期により、また個人差が大きく、投与開始後早期に過強陣痛が出現しやすいため、薬剤による誘発の必要性を厳密に判断し、投与に際しては最低濃度から慎重に漸増する必要がある。しかし、添付文書には詳細な投与量の記載がない。
  3. (3) 妊娠、分娩時における脳出血の実態
    妊娠、分娩時の脳出血に関しては、「厚生省妊産婦死亡の防止に関する研究班調査結果」(周産期医学1999-2)や、母体死亡および重症管理妊婦調査と検 討小委員会による「周産期センターにおける妊産婦死亡の分析」(日本産科婦人科会誌2007-6)に発生数が報告されているが、対象症例につき、オキシト シンを含む薬物使用歴が公表されておらず、陣痛促進剤と母体死亡との関係については明らかとなっていない。このように、オキシトシンと脳出血との関連性が 明らかでないが故に、臨床医は、母体が脳出血を起こした場合に、薬剤との関連性を疑うことはなく、その結果、オキシトシンによる脳出血に関し、副作用報告 がなされない現状にある可能性が高い。

4 基本的行動

オキシトシンによる脳出血の危険性について、厚生労働省と企業に対して、添付文書改訂と脳出血事例に関する実態調査を要望する。

5 具体的行動と結果

2008年11月28日、「子宮収縮剤オキシトシンに関する意見書」を、厚生労働大臣、富士製薬工業株式会社、あすか製薬株式会社および武田薬品工業株式会社に提出した。
要望内容は次のとおりである。
  1. ① 「重大な副作用」欄に、血圧上昇から脳出血に至る副作用を記載すべきこと
  2. ② オキシトシンの投与方法について、添付文書の「用法・用量」欄に、増量速度や維持量をの詳細な記載、母児のバイタルサインチェックの実施、過強陣痛の場合の子宮収縮剤の投与中止を追加記載すべきこと
  3. ③ 過去の妊産婦の脳出血事例についてオキシトシン使用との関連性を調査する研究班設置を求めること

6 今後の課題

医療現場では、オキシトシン使用時に血圧上昇から脳出血に至るという副作用についての認識が弱く、その時に発生する血圧上昇、しびれ、頭痛などの症 状を子癇と判断し、脳出血に対する緊急対処が実施されない実態があると考えられる。要望書に対する回答を改めて要求し、添付文書の改訂を実現させる必要がある。


 このオキシトシンは陣痛促進剤でこれだけのリスクがある。
 ましてやメンタルに関係する薬として使う場合、臨床実験の段階で希望の薬であるかのように書くのは大変まずい。 薬害オンブズパースン会議・タイアップグループの検証作業もないまま、さもあたかも最良の薬であるかのような書き方では薬害をあおる危険性があるのだ。
 私自身、今使っている感情調整剤についてもある意味怖い思いを持っている。「薬によって人格が変わるのは一種の麻薬だ」という思いである。それ故に、根本的な改善方法に踏み切っている。それが生活の見直しなのである。
 ネットアクセスの制限、ストレスのかかるイベントへの参加自粛など、徹底的に生活面にメスを入れた結果、改善は進んだ。発達障がい当事者によっては薬による改善が望ましいケースもある。だが、何でもかんでも薬に逃げてはいけない。短時間で集中して服用して改善し、一気に改善するだけでいいのではないか。
 因みに私は薬をもらう際必ずリスクを確認する。副作用に対して説明ができないのならその医師はもう終わりなのである。その説明があるから、私は主治医との信頼関係ができているのである。 その一方で、患者を無視するような最近のメディアの言動にははなはだ疑問に感じる。極端な密着度にも問題はあるが、不信感だけでも意味はないのである。
 要するに適度な距離感をどれだけ持てるかが問われている。