日米で活躍する人気プロレスラー、ハルク・ホーガン(61=米国)が24日(日本時間25日)、所属団体ワールド・レスリング・エンターテインメ ント(WWE)から解雇された。WWEは理由を明かしていないが、米メディアは、8年前に撮影された動画に人種差別発言があったためと報道。ホーガンは謝 罪するコメントを発表した。差別発言に厳罰で対応する米国社会の姿勢が反映された。
 WWEは、同団体殿堂入りのホーガンを解雇した。理由は明かさなかったが、「従業員もレスラーもファンも多様であるように、私たちはあらゆる背景の人間を受け入れてきた」とする声明を発表。人種差別反対をにおわせる内容だった。公式サイトからホーガンの情報を削除。関連グッズの販売も中止した。
 ホーガンは「8年前に攻撃的な言葉を使ったことは言い訳できない。謝罪したい」とコメントした。米紙によると8年前、長女で歌手のブルック・ホーガン(27)が黒人男性と交際していることに不満を抱いていたという。
 同時期に撮影された動画の中で、ホーガンは黒人への差別用語「ニガー」を使って会話。「あの黒人と結婚するなら、身長8フィート(約244セン チ)の黒人バスケットボール選手と結婚する方がましだ」などと話していた。別の動画には、「私は人種差別主義者だ。黒人はF××Kだ」と暴言を吐く様子が あったという。
 ホーガンは「性行為中の動画を掲載され、健康被害を受けた」として、オンラインメディア企業を相手に損害賠償訴訟を起こしている。この動画の中に人種差別発言があったことが、騒動のきっかけになった。
 長女ブルックは24日、自身のフェイスブックを更新。「私の父親を知る人ならば、優しい心の持ち主だと分かる」で始まる詩を掲載。父親を擁護した。
 ただ、米国ではプロスポーツ界だけでなく、公人による人種差別発言は、社会的に容認されないものだ。日米のプロレス界で一時代を築いた英雄も、今回の発言で例外なく解雇処分を受けることになった。
 ホーガンは持病の腰痛で、昨年2月のWWE復帰以来、試合の出場はなかった。経済誌フォーブスのニュースサイトによると、騒動の影響でWWE株が約4%下がり、損失額が約5000万ドル(約62億5000万円)となった。
 ◆ハルク・ホーガン 1953年8月11日、米ジョージア州生まれ。77年にプロレスデビュー。WWF(現WWE)でアンドレ・ザ・ジャイアント の好敵手として人気に。新日本にも参戦。83年の第1回IWGPではアントニオ猪木を倒して優勝した。96年にケビン・ナッシュらとnWoを結成し、世界 的なブームを起こす。映画やテレビ出演など芸能活動も多い。201センチ、120キロ。
 ◆米スポーツ界での人種差別 大リーグでは1947年、ジャッキー・ロビンソンが黒人選手として63年ぶりに出場。人種差別に負けず、好成績を残 したことに敬意を表し、ロビンソンに絡めたイベントを毎年開催。人種差別反対の姿勢を再確認している。NBAとアメリカンフットボールのNFLでは、選手 の過半数がアフリカ系米国人。それでも差別感情は根強く、各スポーツの統括団体は人種差別発言や行為に対して、厳重な処分を科している。