2015年8月17日月曜日

NPOが本屋を経営する時代も考えねばならない

書店文化の象徴・リブロ池袋店閉店...背後に大家の「セブンイレブン」オーナーの追い出しが
2015年7月19日 19時30分
LITERA(リテラ)
http://news.livedoor.com/article/detail/10367974/

 その独自の取り組みで多くのファンに愛されてきた書店、リブロ池袋本店が7月20日、ついに閉店になる。
 リブロ池袋本店は、1975年に西武ブックセンターとしてオープンし、85年にリブロとして独立。80年代には「ニューアカデミズムの聖地」とも呼ばれるなど、知的でオシャレな「セゾン文化」を体現する存在だった。
 その後も、アートやカルチャーを中心とした独自の棚作りに取り組み、ブックフェアやイベントという仕掛けをつくりだし、カリスマ書店員を次々輩出。「文化発信をする書店」の先駆けになってきた。
 そんな名門書店までが閉鎖になるというのは、時の流れ、本が売れない出版不況がここまできたのか、と思いきや、そういうことではないらしい。
 実はリブロ池袋本店は、経営不振ではなかったようなのだ。2014年2月期決算で同社の売り上げは211億円。これは前年よりも5%マイナスの数字だが、書店全体の落ち込みを考えると、かなり健闘している数字であり、実際、最終利益も黒字を計上していた。

「池袋本店単体で考えると、むしろ、前年よりも売り上げを伸ばしていたという話もあります」(書店関係者)

 では、なぜリブロ池袋本店は閉店に追い込まれたのか。それは、同店が出店している西武百貨店池袋店から契約を打ち切られたからだ。そして、この背後には、西武百貨店のオーナーで、セブンイレブンを運営するセブン&アイ・ホールディングスのCEO・鈴木敏文会長の意向が働いているという。
 リブロは、03年に出版取次大手の日本出版販売株式会社(日販)の100%子会社となっており、一方、西武百貨店は06年にセブン&アイ・ホールディングスに買収されていた。
 ところが、セブン&アイの鈴木敏文は日販のライバル企業取次店であるトーハン出身で、セブンイレブンへの配本もトーハンが受け持つなど、べったりの関係を築いている。
 つまり、鈴木オーナーとセブン&アイが関係の深い取次会社のライバルである会社の拠点をつぶすために、賃貸の打ち切りを断行したのだという。
 事実、今後はリブロの後の店舗をそのまま使い、三省堂書店が入居することが決まっている。これはつまり、「この場所で本屋をやっていても儲からないから」という理由でリブロがなくなるのではなく、大家の出身企業との関係で閉店に追い込まれたということを物語っている。
 セブンの鈴木会長と言えば、セブンのフランチャイズ店に対する仕打ちに象徴されるように、自分たちの利益のためには手段を選ばない冷酷な経営が有名だが、今回のリブロ閉店でもまさにその体質がモロに出たということだろう。
 しかし、冒頭でも書いたように、リブロ池袋店はたんなる書店という枠におさまらない、文化的な価値をもった場所だった。
 1976年から1997年までリブロに勤務し、『書店風雲録』(筑摩書房)、『書店繁盛記』(ポプラ社)といった著書もあり、今はジュンク堂池袋店副店長を務める田口久美子氏が現在発売中の「本の雑誌」(本の雑誌社)2015年8月号で、リブロ池袋本店閉店のニュースに接したときの思いをこう書いている。

〈3月4日の毎日新聞に「セゾン文化体現『ニューアカ』の聖地 リブロ池袋6月閉店」の記事が載った。2月頃からそれは噂として業界を駆け巡っていたが、新聞記事を目の前にしてあらためて「私たち」が受けた衝撃は深い。
「私たち」とは誰だろう。1976年に当時の西武百貨店書籍部〈75年設立〉に入社し、97年にリブロを退社した私もむろんその数に入る。だが、毎日新聞のタイトル、そして5月11日の朝日新聞記事「仕掛けた書籍 難解本も売れた」、つまりリブロ池袋店が書店として表現した時代を記憶しているかつての顧客層が「私たち」の筆頭なのだろう。そしてリブロで働いている、いた、書店員たちだ。彼らのためにも「リブロ池袋店」を書き残したい〉

 そして、リブロにまつわる数々の逸話、その場所をつくりだした、中村文孝や今泉正光という2人の書店員の思い出を綴り、こう分析している。

〈まさにリブロはアカデミズムの外、書店という情報発信の中心にいたのだ。それまで書店は「情報を並べる場」であった、それが「発信地」という役割を初めて持った、と私は思う。そして東(浩紀)の総括通り、90年代半ばにその役目を終え、リブロは変容を余儀なくされた。それは「時代」のせいばかりではい、端的に「堤清二の失脚」がど真ん中なのだが、堤清二が「時代の子」であったと考えれば、時代のせいなのであろう〉

 たしかに、このところのリブロがかつてほどの影響力は失っていたのは事実だ。だが、今回のリブロ閉店は「時代のせい」ではない。まさしく経営者の身勝手な都合で「読者不在」のまま、断行された。本を、書店を、愛する者として、今回の件は残念でならない。
(井川健二)

 利益優先主義のセブン&アイグループのあり方を厳しく見直すべきだ。
 私は今の本屋でそれほど本を買いたいとは思わない。店頭にあるヘイト本の巣窟。売れるためなら何でもありの異空間。あまりにも異様すぎて、私は見るものがどんどんなくなっている。
 ドンドンとヘイト本がはびこると同時に、品質の高い本は駆逐され、もはや異様というしかない。

 私は今後、書店などの生活インフラについてNPOによる経営も真剣に考えるレベルにあると見ている。
 リブロの文化の意思を引き継ぐNPOを元店員や市民が立ち上げて、池袋のオフィス内に作るべきだと見ている。ちなみに居抜きで乗っ取る三省堂はヘイトブックで稼ぐ最悪の書店で悪名高い。つまり、セブン&アイグループも売れるためならイオングループの未来屋書店に出店してもらっていいと考えてもいるのだろう。
 そんな傲慢なやり方を、堤清二氏は喜んでいるとは思わない。