2015年11月18日水曜日

命の重みを知らないから、安易に「せい」を語りたがる

 今回はある意味、ちょっとリスクのある動画を引用している。
 不快感に感じることをお許し願いたい。

2014年10月28日 毎日新聞社
 講談社の「週刊少年マガジン」で連載されている瀬尾公治さんのマンガ「風夏 (ふうか)」で、タイトル名にもなったヒロイン・秋月風夏が事故死するという衝撃の展開になっていることが28日、分かった。ヒロインが非業の死を遂げる 展開はさまざまな作品でみられるが、タイトルにもなっているメインヒロインが物語の途中で死ぬのは、連載中のマンガでは極めて珍しいケース。瀬尾さんは 「涼風」や「君のいる町」など甘いラブストーリーで人気を博してきただけに、マンガファンの話題となりそうだ。
 22日発売の「週刊少年マガジン」47号では、風夏が主人公の少年・優と両思いになった後、事故に遭って大量出血するシーンが描かれており、ファンの間で「展開がハード過ぎる」と話題になっていた。29日発売の同誌48号では、風夏の死が作品中で明確に描かれる。
 同作は、瀬尾さんが約6年間連載した「君のいる町」の連載終了を受けて、今年の2月に連載をスタートさせたばかり。「君のいる町」の最終話と「風夏」の第1話を同時掲載。異例の取り組みとして注目を集めた。
 講談社のマガジン編集部は「衝撃的な展開になっているが、今後の展開に注目していただければ」と話している。



 今回はかなり厳しいコメントをさせてほしい。
 最近の「週刊少年マガジン」がひどい。以前ここで取り上げた「風夏」のヒロインの死亡による退場、「聲の形」による障碍者差別(今回の場合は主人公の石田将也も発達障害の可能性があり、発達障害への差別、難聴当事者への差別)、そして極めつけは性情報氾濫を象徴する「ドメスティックな彼女」である。この作品に至ってはしょっぱなから性交なんだからもう、終わっている。
 こういう漫画に共通しているのは、命の重みが全く感じられないこと。同じ過ちを犯したのが「四月は君の嘘」なる音楽漫画である。ヒロインが死亡して最後「感動した」という、極めておぞましいほど安直な最後に終わっている。
 漫画家の江川達也氏の「東京大学物語」では最後妄想に終わってしまったが、その過程の中で生きることや死ぬことを丁寧に描き切った。そのため、ヒロインの出産はその延長線で重みがあった。青年誌だけあってそれなりの覚悟があったのかもしれない(ちなみに江川氏も自ら妻の出産に立ち会い、子供を取り上げている)。

 そもそも、命の重みを若年層が安易な形で書くことは非常に難しい。
 なぜなら、出産の経験もない、親になる経験もない。私のようにあえて独身を選んだ人でも、障碍などで苦しい思いをしてきたからそれなりに描ける人もいる。その苦しみは個々人別々なのであり、比較は一概に出来かねるが、あまりにも命を甘く書きすぎているとしか思えない。中年の人でも命の描写は非常に難しいのだ。
 現役の主治医から話をきちんと聞き、監修を受けた結果、「ゴッドハンド輝」は10年という長きにわたって鋭い光を放った。それに比べて「風夏」にしても、「聲の形」にしても、「ドメスティックな彼女」にしても、「四月は君の嘘」にしても命の重みをあまりにも軽く見すぎているとしか思えない。同じ講談社にしてはあまりにも質が劣っているとしか言いようがない。
 命の重みをこの四作品はあまりにも知らなさすぎた。だから、安易に「せい」を語りたがるのだろう。だが、その「せい」(生でもあり、性でもある)は私たちにとってはあまりにもかけ離れた非現実的なものである。そして、ネットではそれを過激にしたようなものが横行する。そんなのでいいといえるのだろうか。まさしく、生きることを刹那的な刺激と勘違いしているのではないか。それでは、刺激の奴隷になってしまう危険性が高い。
 もし、東日本大震災の被災者や戦争被害者がこれらの漫画を見たらあまりの軽さに唖然とするのではないかと私は思っている。 




 はっきり言って、命を甘く見ないでもらいたい。