2016年3月30日水曜日

ひきこもりを克服するために社会は何をすべきか

発達障害の若者に仕事を ひきこもりだった34歳の場合

 発達障害=キーワード=に気づかないまま社会に出た若者の就労支援が、自治体で課題になっている。支援には何が必要なのか――。専門家によるネットワークづくりを今月からスタートした世田谷区で、職に就いた男性のケースから考えた。
契約社員となった発達障害がある男性(手前)は郵便物の仕分けといった事務作業をこなす=千代田区霞が関のEY税理士法人

 《文部科学省は、小中学校の通常学級にいる発達障害児は全体の6・5%(2012年)と推測する。卒業後の就労状況などのデータはないが、職が得られない人も少なくないとみられる。就職できても周囲の理解がないとトラブルになり、退職を余儀なくされるケースもある。》

 社内外から集まった郵便物を仕分けし、合間に顧客ファイルの貸し出し、返却といった業務をこなしていく。発達障害がある世田谷区出身の男性(34)は昨年6月から、千代田区霞が関の「EY税理士法人」の総務部で働く。
 アルバイトから始め、2月からフルタイムの契約社員に。「ここまでできるとは思わなかった。職場が楽しい」。男性は笑顔だ。
 男性は専門学校を卒業した01年から引きこもりの状況だった。学習能力には問題はなかったが、初対面の人とのコミュニケーション能力が低く、突発的な出来事への対応が苦手だったことなどから、就職活動はうまくいかなかった。
 周囲が男性の発達障害に気づいたのは卒業から10年以上たった12年。正式に診断を受け、障害者手帳を得たのは昨年のことだ。
 発達障害が学校や社会で認識されていないことが原因とされる。過度な物事へのこだわり、対人交渉や状況判断能力の欠如など、障害の内容や程度は幅広い。「変な人だな、程度の認識で見過ごされている」(世田谷区障害者地域生活課)。

 ■障害発見から就職準備まで




 《発達障害は精神、知的の2障害と複合している事例が多い。世田谷区は今月から試行事業だった発達障害者の就労支援を正 式に位置づけ、すでにある若者向けや2障害向けの就労事業とネットワークを組む。発達障害の就労支援にネットワークが確立している自治体は全国でも珍し い。》

 引きこもりを見かねた姉の勧めで、男性は10年から区の「せたがや若者サポートステーション」に通い始め、発達障害の疑いを指摘された。
 ステーションは不登校や中退した若者の職業自立が目的。6カ月以上経過しても進路が決まらない人の半数に発達障害の疑いがあるという。
 「有名大学を卒業している人もいる。本人や家族が障害に気がつかないほか、認めたがらないケースが少なくない」(ステーションの篠原健太郎所長)
 解決に向けたプログラムが「みつけば」だ。発達障害を抱えるピアサポーターと互いの体験を語り合い、イベントを共にする。男性はプログラムをきっかけに、区が12年度に発達障害の就労支援として始めた試行事業「ゆに(UNI)」の利用を決めた。
 UNIは今月から正式な支援施設になった。民間企業などへの就職を目指す就労支援センターと、パンなどのオリジナル商品づくりなどをする通所部門に分かれる。家事など社会生活を送るのに最低限必要な訓練を積み、仕事を探す。
 男性は手順が決まった作業であれば、混乱なくこなせた。短期アルバイトから始めて実績を残し、就労に結びつけた。

 ■採用企業の相談も

 《企業は社員の一定割合を障害者とする法定雇用を義務づけられている。身体、知的障害に加え、18年度から精神障害も対象にな る。発達障害は精神障害の一つとされており、就労の機会は広がる可能性が高い。ただ、障害の多様さから働き方のモデルをつくるには手間がかかり、企業側の 受け入れ準備も進んでいない。》
 男性を採用したEY税理士法人は08年から障害者雇用を始めたが、定着率は2割程度。13年からは発達障害者を受け入れる。UNIの手厚い支援体制が決め手となった。
 UNIは就労した後もスタッフが職場に通い、障害者と企業側の相談やトラブルの対応にあたる。男性の場合、出社から帰社まで仕事の「時間割」をつくり、自分のペースで働けるようになるまで寄り添った。
 UNIの平雅夫センター長は「初めて発達障害に接する会社は障害への理解が浅いし、障害者も不安を抱えている。双方と信頼関係をつくり、調整する役目が不可欠」と話す。
 同法人で障害者雇用を担当する藤本英則総務ディレクターは「発達障害は分かりにくい障害だけに、社会で認められていないという思いを抱えている人が多い。会社側が障害を正しく理解することで、就労の機会は広がる」と話す。
 (重政紀元)

 ◆キーワード

<発達障害> 意思疎通が苦手な自閉症などの広汎(こうはん)性発達障害、読み書きなどに問題がある学習障害(LD)、落ち着きがない注意欠陥多 動性障害(ADHD)などの総称。脳機能の先天的な障害が原因と考えられている。2005年に施行された発達障害者支援法で子どもへの支援は一定程度広 がったが、それ以前の卒業生の状況調査や支援が課題になっている。
(朝日新聞 2015年3月29日掲載)

ひきこもり息子と7年ぶりに対話 全ての歯が虫歯になってた

2015.04.11 16:00

「後悔する者にのみ、許しが与えられる」とはイタリアの詩人、ダンテ・アリギエーリの言葉。失敗や過ちを犯すことは誰にだってある。大切なことはそれと向き合い、心の底から後悔すること。そうやって初めて新しい自分を得ることができる。58才パート女性が語った7年ぶりに対話を果たしたひきこもりの息子との心のふれあいのストーリーを紹介する。
 * * *
 私が親の介護に追われていた時のこと。ある日、中学校から、息子が何日も登校していないと連絡がきました。朝はちゃんと家を出ていたのに…。でも実は、息子は公園で時間を潰して、夕方、家に戻って来ていたのです。

「どうして学校に行かないの?」

 私がそう問い詰めると、息子は何も言わず、自分の部屋へ。以来、引きこもるようになってしまいました。
 夫が話しかけても、息子は鍵をかけた部屋から出てこない。ドア越しに厳しく詰め寄ると、部屋の中から物が壊れる激しい音が聞こえました。中学にはほとんど行かないまま息子は卒業。高校にも行きませんでした。
 私や夫と顔を合わせることなく、私たちが外出している時や寝ている時に冷蔵庫にある料理を食べていたようです。
 しかし、息子が20才になったある日、「歯が痛い」と部屋から出てきました。歯医者に連れていくと、全ての歯が虫歯になっていて、先生が絶句するほどでした。病院に付き添い、7年ぶりに息子と話す機会が訪れました。気まずい空気が流れましたが、私のほうから「どうして学校に行かなかったの?」と改めて尋ねたんです。
 そして初めて、息子が中学時代に教師も加担する悪質ないじめを受けていたことを知りました。

「どうして言ってくれなかったの?」

 私がそう聞くと、息子は「聞いてくれなかった」と怒鳴り、「母さんのせいでおれの人生は滅茶苦茶だ!」と、テーブルを叩きました。いつの間にか身長は私や夫を追い越し、大きくなった息子の苦しみにその時まで気づこうともしなかったのです。親の介護に精一杯で、私は息子を何も見ていませんでした。私は、「ごめんね、一緒にやりなおそう」と息子を抱きしめました。
 息子はただ黙っていましたが、私を振り払うことはしませんでした。息子は今でも外出することはありません。でも、居間に顔を出すようになりました。今度こそ息子のSOSを見逃さないよう、寄り添って生きていきます。
※女性セブン2015年4月23日号



 今回朝日新聞の記事に対して感謝申し上げる。
 ひきこもりを克服するには、単に原因を突き止めるだけではいけない。 2番目の「女性セブン」でわかるように、公平と公正の担保もワンセットでなければならない。
 日本の行政は、特定の金権勢力によってめちゃくちゃにされてきた。それが、法人税の不当減税犯罪、消費税の不当増税犯罪になって現れた。そのことに対して、日本人の大半は奴隷の論理にどっぷりハマり、何もしないありさまである。
 私の場合は抵抗することを続けていた。それが社会に行ってからパワハラによって何もかもできなくされ、そして最終的に発達障がい当時者であることも分かり、「甘えることはできない」という考え方を鮮明にした。権利を駆使するならば、それなりの覚悟を持たねばならないということも、自分なりに身につけてきた。
 このやり方を障がい者の皆さんに真似ろとは私は思わない。それぞれがそれぞれの考え方を持って向かい合えばいい。ひきこもりを克服するために必要な手当として、私は社会全体が公平と公正を取り戻すことが重要であると考える。
 そのために、今こそハラスメント罪の導入を行うべきだと明言する。このハラスメント罪はイギリスにある法律で、様々な嫌がらせに対して刑事罰で制裁を課すことができる。日本は民主主義を取り戻す一歩として、このハラスメント罪を今すぐ導入し、パワハラや過去のいじめを1990年にさかのぼり断罪すべきである。その中で悪質なものについては、懲役刑で罰するとよろしい。
 それによって、社会が新たな人員を迎え入れ、活性化される利点がある。つまり、ハラスメント罪は日本の民主化には待ったなしの切り札なのである。