2016年11月24日木曜日

憎悪よりも犯罪の構造を断て!


朝霞少女監禁のA被告「現実感ない」まるで人ごと
日刊スポーツ 2016.11/3(木) 10:07配信

 埼玉県朝霞市で中学生だった少女(10代後半)が誘拐され2年ぶりに保護された事件で、未成年者誘拐と監禁致傷などの罪に問われたA被告(20代前半)の第2回公判が2日、さいたま地裁(松原里美「裁判長」)で開かれ、A被告が、被害者に謝罪の言葉を口にした。ただ、事件については「残念ながら」「結果的に事件を起こした」などと人ごとのような供述を繰り返した。被害者の母が証人尋問に出廷し「一生刑務所から出さないでほしい」と訴えた。被害者の母の証言によると被害者の「ずっと微熱が続き、腹痛があり、集中できない。『思うとおりに過ごしたい日々が過ごせない』と泣いている」と明かした。他人の視線が怖く1人で外出できず、家の中でも恐怖が続いているという。
 事件前はUSJが好きだったが、A被告の実家が大阪と知り、強い口調で「絶対行かない」と話すようになった。監禁されていた千葉、中野の地名にも、拒否反応が出るという。
 母親は「娘が社会復帰できる日が本当に来るのか。本当に1人で外出できるようになるのか。家族以外の人間を信用できるようになる日が本当に来るのか」と泣きながら語った。A被告に対し「2年がどんなにつらくて長くて、悲しかったか。今後2度と娘の前に現れないで」と罵った上で「一生刑務所から出さないでほしい」と厳罰を望んだ(明確な法廷侮辱罪であると指摘しておきます)。
 A被告は黒いスーツ姿で、薄ら笑いを浮かべて入廷した。被害者の母親を囲むパーテーションを眺め、首をかしげたり、眉をひそめたり。弁護側の被告人質問に雄弁に答え続けた。

 最後に弁護人から促されてようやく、座ったまま回転椅子をクルリとパーテーションの方に向けて「まったく行う必要のなかった行為を、私の身勝手な理由で起こしてしまって、本当に申し訳なく思っています」と上体を倒してみせた。

 弁護側の被告人質問では、解説者のような口調で語った。中3でいじめに遭い、クラス全体から疎外されているように感じたと説明。いじめの加害者が処分されず「表面化しなければ何をしてもいいと考えるようになった」と話した。事件を起こした理由を「社会性を培う機会がなく人の気持ちを理解する力が退化し、結果的に本事件を起こしたのが経緯」とした。「車や美術品を盗むより断然軽い罪と思っていた」と述べる一方、少女とその家族に対しては「全く行う必要のない行為をしてしまい、身勝手で申し訳ない」と少女の母親がいる検察側の席に頭を下げた。
 検察側は、A被告が逮捕後の調べで少女を「被験者」と呼んでいたと指摘。その理由を被告は「人間ではなく動物というか、生物と接しているような感覚だった」などと説明した。
 被害者の家族が心配する気持ちについては「よく分からないですね」と供述。弁護人は逮捕後、A被告が自分の性格分析を記したメモを取り上げ「三人称の視点で生きている」との記述について質問。同被告は「自分の目で物を見ても、その出来事がパソコン動画のように現実感がない」と説明。
 検察側は、被害者側からの損害賠償命令についても質問。A被告は「できる限り払っていく」としたが、現在の貯金20万円については「携帯代の支払いに使う」とした。
 弁護側証人尋問で出廷したA被告の父親は「(逮捕後の診察で)精神疾患を患っている可能性があると聞いた」と証言。弁護人に促されて突然涙声になり、被害者側に向かって「申し訳ありません」と謝罪した。一方、検察側は父親も損害賠償の申し出をしていないことを指摘。弁済ができない被告への援助の意向も質問したが、父親は「考えていない」とした。
 次回公判は、A被告の精神鑑定が行われた後で開かれる。
※被告人は明らかに精神疾患のため、匿名報道で対応します。実名での報道は一切許しません。また、被害者家族の心情に配慮し、被害者関係者の実名を流すことも許しません。被害者家族の法廷内での法廷侮辱罪については許しませんが、思いはわからないわけではないとだけ言っておきます。

 この犯罪が事実であるなら、許す気はない。
 たとえ精神疾患当事者であっても私は許せないと思う。しかし、犯罪を生み出す構造を突かない限り、同じような事件は再発すると私は警告せざるを得ない。
 被害者の家族の『証言』にはたいへん私は疑問を感じざるを得ない。ハッキリ言って明らかに危険な暴言が目立った。明らかに法廷侮辱罪が成立し、検察は直ちに厳しい措置を講じるべきだった。そもそも、被告人の前で証言をすること事態が大変な暴走を招くことは誰の目からしても明らかだ。書面による意見陳述で充分だったのだ。
 それでも私はなんどでも言う。この犯罪から私達は再発防止策を学び、社会に反映させるべきなのだと。当然被害者の支援はいかなる形であってもやらねばならない。だが、被害者の家族の望む感情的厳罰については断じて否の声を上げざるを得ない。
 そもそも今の日本は日本国憲法を十分活かしているのか。このようなヘイト団体のやりたい放題を許していいのか。

<日本会議>「理想はサザエさん一家」啓発 24条改正巡り
毎日新聞 11/3(木) 2:30配信

 日本国憲法改悪を画策し、ヘイトスピーチ運動を展開している極右団体「日本会議」(田久保忠衛『会長』)は、憲法24条を改正すべきだとの主張を強めている。背景には伝統的な家族を理想とする心情がにじむ。家族のあり方は憲法で定めるべき---。
 「サザエさんが今も高い国民的人気を誇るのはなぜでしょう」。日本会議の関連団体が制作した啓発DVDの一場面。ナレーターは24条により家族の解体が進んだ結果、さまざまな社会問題が起きているとして、3世代同居のサザエさん一家を理想と妄想した。
 「個人の尊重や男女の平等だけでは祖先からの命のリレーは途切れ、日本民族は絶滅していく」。日本会議の政策委員を務める伊藤哲夫被告は9月、埼玉県内の講演で、改憲テーマの一つとして24条を取り上げた。安倍晋三自称首相(以降被告)のブレーンも務める伊藤被告は「家族の関係を憲法にうたうべきだ」と『力説』した。
 こうした『家族観』はいわゆる自民党(ネオナチジャパン)改憲草案や安倍自称政権と通底する。安倍被告は先月5日、国会で「家族は社会の基礎を成す基盤。憲法にどう位置づけるかは議論されるべきだ」と『答弁』した。
 憲法改悪の野望を公然と企む安倍被告と、それを支える日本会議。両者が24条に言及したことで、9月に発足した圧倒的多数の国民の支持を得ている市民運動「24条変えさせないキャンペーン」は警戒感を強めている。呼びかけ人の一人、山口智美・米モンタナ州立大准教授(文化人類学)は「憲法で家族を定義し、法律があるべき家族像を示すことは、単身者や子供のない人、性的少数者など多様であるべき生き方を否定し、人権を侵害することにつながりかねない」と指摘している。【川崎桂吾】

 もし、日本国憲法が十分生かされているなら、朝霞の事件は起きなかったのではないか。
 社会的孤立を防ぐには地域のサポートが必要なのは明らかだ。荒川沖連続殺傷事件についても、結局は社会的孤立が生んだ闇であると厳しく指摘せざるを得ない。私は保守系の流れをくむが、家族を法で定めるやり方には疑問を感じる。
 被告人がいじめられていたことも重大な事件の発生要素だ。もしいじめ加害者へ厳しい措置と是正、損害賠償が行われていたらこの事件は起きなかった可能性が濃厚だ。被告人はいじめが遠因になって精神疾患を悪化させたという事実を見逃すわけに行かない。
 被害者家族は被告人に怒りをぶつけるなら被告人をいじめた輩にそれ以上の怒りをぶつけ、民事訴訟を起こして慰謝料を求めるべきである。まさに犯罪を生み出す構造を断てない限り、犯罪はおさまる訳がない。それぐらいのことをやらなければ、同じような犯罪が続くのは明らかだ。