2018年3月12日月曜日

女性を名誉男性にする大河ドラマ

女性政治家は、本当に"名誉男性"なのか
第1回 「女子力」で地域の課題を解決
週刊東洋経済
新田 哲史 :広報コンサルタント/コラムニスト 2014年11月05日

 東京都議会のセクハラヤジ、政務活動費の不正流用した兵庫県議の号泣会見、女子中学生にLINEで威圧的メッセージを送った大阪府議、20人中15人の市議が逮捕された青森・平川市議会――こうした数々の不祥事により、「地方議員」は異例の注目を集めた。いったい地方議員は何をしているのか。本連載では、ネット選挙のコンサルを手掛け、新聞記者時代に地方議員の取材を経験した筆者が、当事者の声を聞き、地方議会、議員のこれからを模索する。

閣僚になる女性は「名誉男性」!?
 女性の活躍推進を謳った第2次安倍改造『内閣』は、船出早々に2人の女性『閣僚』が辞任した。近頃、ウェブ上では「名誉男性」という見慣れぬ言葉が目に入る。男性的価値観を身に着けた女性を意味するスラングらしい。先日もFacebookで、友人の女性が「名誉男性を登用して女性の輝く社会と言われても」と率直な疑問を書き込んでいた。彼女は最近再婚するまでシングルマザーだった。
※安倍自称内閣の正統性を認めない観点から『』とつけます。
 友人は「待機児童を抱え、激務の夫に家事育児を手伝ってもらえない。実家も頼れないなかで働くような女性を登用してほしい」とも望んでいた。現実的ではないが、女性の平均的な本音かもしれない。
 多くの人には、国会だけでなく地方議会の女性議員も、政治家である以上は、やはり男性的である、との思い込みがあるかもしれない。しかし、実際はそうではない。東京・港区議会の柳澤(やなざわ)亜紀さん(33歳)は現在1期目。この4年弱、まさに女性の人生の悩みを投影した政治生活を送ってきた。
 徳島生まれで、大学まで四国で過ごした後、資生堂に入社。デパート担当の営業を務めた。「昔から人のために働きたい思いがあったが、社会を変えるのは会社だと思っていた」と政治家志向ではなかった。しかし20代の終わりに結婚し、港区に住んでいた2010年春、長女・真愛(まお)ちゃんが誕生したことが転機になる。
 地域のママ友が子どもの預け先を見つけられず、働きに出られない悩みを見て「港区は豊かな街なのに税金は何に使われているのか」と疑問を感じた。政治家として待機児童問題に取り組むことが頭に浮かび、夫やママ友たちからも「やってみなよ」と後押しされた。
 
子どもをおぶって候補者面接に
 夫がたまたま民主党の地方議員にツテがあったのを契機に立候補志望者の選考面接へ。会場に4カ月の娘をおぶって行くが泣き止まず、党幹部から「出馬は止めろ」と言われた。しかし、かえって闘志を燃やしたという。
 「世の女性は出産を機に色々我慢している。それを直すのが政治家の仕事ではないか」
 とはいえ地方出身で港区内に地縁・血縁はなく夫も会社員。地盤・看板・かばんもない中での出馬だったが、有権者の支持を集め、2011年の区議選は3位で初当選した。

シングルマザーでも堂々と生きる社会を
 立候補時の名前は「小田あき」。しかし当選後に離婚した。女性政治家の離婚は珍しくないが、結婚時の苗字を名乗り続ける人が多い。政治家を企業に見立てると、名前は「社名」「ブランド名」「商品名」にあたる根本的なものだからだ。しかし柳澤さんは旧姓に戻し、「やなざわ亜紀」として活動する道を選んだ。「選挙にはマイナスでしょうし、離婚について地域の年配女性にお叱りも受けた」と打ち明けるが、「前夫の苗字のまま政治家を続けたら、いつか娘に疑問を抱かせてしまう。長い人生を考えて決断した」と前を向く。
 もちろん都会でシングルマザーが政治活動をするのは容易ではない。たまに母親が上京して真愛ちゃんの面倒を見てくれることもあるが、基本は自分一人。議会のない時期も平日は陳情を受け、土日は学校行事や町内会、清掃活動と予定はびっしりだ。4歳の一人娘にもう少し付き添う時間が欲しい、と思う切なさも感じる。
 それでも柳澤さんは「シングルマザーでも関係なく、堂々と生きていく社会を作りたい」と話す。区民からの相談では、保育園や学童クラブ等に加え、女性から離婚の悩みを持ちかけられることが増えた。「こんなことまで、亜紀ちゃんに言っていいのかしら?」地域の人たちからそう声をかけられることに「私の存在価値がある」と感じている。
 さて、最大の政治勢力である『自民党』(ネオナチジャパン)の女性地方議員は、女性の政治参画をどのように考えているのか。地方議会が注目される契機になった都議会のヤジ問題の件も含め、都議会『自民党』で初の女性幹事長に就任した村上英子さん(渋谷区選出)にインタビューを申し込んだ。

都議会『自民党』初の女性幹事長
 「幼い頃は電信柱にも頭を下げろという時代。政治家の娘として地域の視線を受けていた」
 父は都議会議長や渋谷区長を歴任した小倉基氏。一般的に、地盤、カンバンを引き継ぐ二世議員は批判をされることが多い。しかし、だからといって簡単に政治家が務まるわけではない。
 村上さんは20代早くに結婚。家事や子育てと両立しながら、父を秘書として支えてきただけに「女性は家庭を守っていく感覚があったので、政治家になるつもりはなかった」と話す。しかし父の政界引退後、選挙区事情により、2003年の都議補選に出馬して初当選。政治家の道を歩んだ後も家事は極力こなしてきた。「さすがに幹事長就任後は同居の娘に頼ることも増えましたが、家族の理解あっての議員生活」と感謝を口にする。
 古風なバックボーンを持つ村上さん。政治家の仕事の中身について「男女差はない」と言い切る。ただ、初当選時には都議会の女性トイレが議場近くは1つしかない、厳然たる男社会の「現実」も感じ、改善を訴えてきた。
 ヤジ問題で会派は社会的批判を浴びた。他党の都議は、村上さんの幹事長就任について「女性登用でイメージを変えるのが狙いではないか」と冷ややかな見方を示す。村上さん自身は、同僚の男性議員が塩村文夏都議(みんなの党)に対し、「早く結婚した方がいいんじゃないか」などとヤジを飛ばした場面は議場に居合わせていなかったが、「発言はとても残念。申し訳ない気持ちでいっぱいです」と率直に陳謝する。ヤジが出た理由を尋ねると「ある年齢以上の先生はセクハラやパワハラの教育を受けていない」と世代間の意識差を指摘する。
 「私たちは言葉に責任を持っている」と村上さん。男性議員から「こんな一言でもセクハラになるのか?」と尋ねられるなど、「個々の意識が変わってきたことを実感する」と強調する。『自民党』のオジサン議員たちを変えられるかこれから手腕が問われる。

主婦目線?地方議会の「女子力」とは
 日本の地方議会の女性議員は11.4%しかいない(2012年、総務省調べ)。最も高い東京23区議会でも25.7%にとどまり、4割近い町村議会に至ってはゼロ(国政も、衆院の8%は先進国の下院で最低だった=14年1月)。海外の地方議会と比較すると、米国の州議会は2003年時点で2割を超え、スウェーデンでは女性議員が半数の市議会もある。
 米国の州議会を対象にした研究(スー・トーマス氏「女性はどのように立法をするのか」)では、女性議員の多い州では、女性や家族、子ども関連の法案が多く提出される傾向が指摘されているが、日本の地方議会でも同じような効果があるのだろうか。
 東京・港区では大型マンションの建設ラッシュで待機児童が近年増加。2013年には195人に達した。柳澤さんを始め、女性議員たちが議会で声を上げ続け、区も過去最大の保育定員拡大へと予算を投じ、翌年4月には47人に減少した。「声を大きくしていけば行政は動かざるを得ない」と柳澤さん。ともすれば年配世代が主導権を取りがちな地方政治にあって、現役で子育て中の女性議員が区民の声を届けた好例だ。
 一方、上の世代はどうか。村上さんは普段着でスーパーで買い物をしていて有権者に驚かれることもあるが、「ネギやお肉の値段が上がった、下がったということや、消費税の影響で生活がどうなのか肌で感じられる」。“主婦目線”が福祉や地域経済振興等、生活者視点での政策づくりにつながる。

「性」への意識の低さ~LGBTの視点から
 しかし女性の政治参画を進めるにも、政治・行政の現場意識はまだまだ低い。
 ヤジ問題の後に新聞や雑誌が女性議員のアンケートを行い、「体を触られる」等のセクハラ告発が相次いだ。都議会のヤジ問題について、豊島区議の石川大我さん(社民党)は、「昔からあったことだが、(被害者側の)党や議員が若かったことでおかしいことはおかしいと言えた」と問題の根深さを指摘する。
 セクハラは女性に対してだけではない。石川さんは同僚議員と地方視察に行った際、宿泊先が相部屋ではなく個室だと一同に知らされた際、耳を疑う発言を聞いた。「俺の身の安全が確保された」――。石川さんが同性愛者であることを公言し、LGBT(性的少数派)の地位向上、権利拡大を主張していることを揶揄するような発言だ。「その議員は『ゲイは男を襲う』という短絡的な考え方だったのだろう」と半ば落胆気味に振り返る。10月下旬にはまたもセクハラ発言があった。石川さんを含む男性2人と女性4人が所属する会派構成にあって、もう一人の男性区議が「会派で実質的な男性は私だけ」と発言したのに抗議した。
 しかし石川さんが議員になってから行政側の意識は変わりはじめた。スポーツ施設建設が議題に上がった際には、性同一性障害者の更衣室利用についての想定問答を用意。豊島区の自殺予防対応マニュアルにもLGBTの項目が盛り込まれた。

政治と性~問われる有権者の意識
 女性議員を増やすため、一定数を割り当てる「クオータ」制が、世界90か国近くで法的または政党の取り組みで導入されているが、日本ではまずは男女の役割や差を政治がどう向き合い、互いの良さを引き出しあうか、政治家も有権者も議論を深め、社会的合意を確立することが優先だろう。ただ、「性」を巡る現実は多様で複雑だ。昨今の女性登用はキャリアウーマンの話が目立つが、村上さんは『保守』の立場らしく、「女性が輝く社会づくりは、家庭で子育てや介護に取り組む女性にも光を当てるべき」と語る。
 石川さんは小学校の入学式に議員挨拶で訪れた際、教職員に「お子さんは何年生ですか?」といきなり尋ねられた。彼は未婚だ。同性愛者にとって異性愛を前提とした話は「セクハラ」だろうが、仮に異性愛の独身男性に対しての質問だったとしても配慮不足に受け取る人もいるはず。政治と性を考える時、私たち有権者の意識も問われているのである。

1.『おんな城主直虎』の本質は名誉男性ではないか
 最初にこの事を取り上げたのは、2017年に放映された大河ドラマ『おんな城主直虎』からである。
 大河ドラマはいわばその時代の象徴にすぎない。女性が主役になり始めたのはつい最近だが、私が危惧しているのはみんな強い女性ばかりであるということだ。いや、弱い女性もいることはいるが、あくまでも男性の引き立て役に終わっている。
 いわば、女性が名誉男性として動いている時代である。その歪みが、電通の過労自殺犯罪に繋がったのではないか。

2.『花燃ゆ』の本質はアベシンゾーのゴマすりドラマである
 2015年に『放映』された大河ドラマ「花燃ゆ」では明治維新を生き抜いた吉田松陰の妹・文を主役にしている。久坂玄瑞の妻となり、激動の長州藩の運命に翻弄されながらも、新しい時代へと松陰の志を引き継いでいくというが、主人公は一体誰か。
 私は久坂玄瑞であり、吉田松陰であり、高杉晋作ではないかと指摘してきた。そもそも、このドラマの本質は安倍自称首相へのゴマすりに悪用されただけにすぎない。その本質が見事に見抜かれ、視聴率が低かったのは言うまでもない。
 女性はモノではない、生きている一人の生活者であることを忘れないでほしい。そういう意味で翻弄された井上真央さんが可哀想だった。

3.大河ドラマにとって女は男性の慰め者にすぎないのではないか
 大河ドラマから見えてくるものとは、弱者が大河ドラマに描かれていないということだ。
 戦争の被害者であるのは庶民だ。その庶民が主役になったドラマが有ったのだろうか。私はそういった話が全く耳に入っていない。豊臣秀吉に代表されるように単なる立身出世の物語に終わっているのではないか。そういった世界観では女性は支配者男性の慰め者に成り下がっている。
 メディアが政府との癒着を強めた結果、このような低レベルのドラマが出てくるのだ。このままでは視聴率稼ぎのためなら大河ドラマの時間がアニメ放映に当てられてもおかしくない。

4.NHKの民主化を急げ
 私はNHKの民主化を急ぐべきだと言い続ける。
 会長をまずNHK全職員による投票制で選び、そのもとで市民記者を積極的に採用することが改革では必要だ。その中で政治部と政治家の癒着を厳しく裁き、悪質なケースについては告訴することも辞さない姿勢を示すべきだ。
 バカウヨ共が発狂する改革案こそがNHKの再建には不可避だ。イオングループの支援を受けてマイカルを再建させた瀬戸英雄弁護士は更生案を出した際に多くの利害関係者から反発を買ったが、『全体の債権者から拒否される案こそが本当の改革案だ』と部下たちに発破をかけ、毅然とした姿勢でハイエナファンドを懲らしめた。
 その言葉が今こそ必要だ。