2013年10月20日日曜日

地方百貨店を考える~番外編・王子サービスセンター




 「ショックでしたね。数年前からシネコン(シネマ・コンプレックス=複合型映画館)の計画を温めてきたので」
 イオン苫小牧ショッピングセンター(仮称)の目玉の一つ、シネコン。進出の知らせを聞いて、苫小牧市内のある娯楽施設支配人は、残念そうに語った。
 「シネコン進出で、中心街から映画館がなくなることがあるとすれば、中心から文化が消えるということだ」。単館系映画館の堀岡学シネマトーラス代表は、シネコンに反発を覚える。
 その一方、恵庭市の「シネマ8」や札幌市の「シネマフロンティア」など、近隣のシネコンに映画人口が流れているのも事実だ。「これまでよりシネコンが近くになる。同じ料金を払うなら、近くて設備が良いところがいい」と、市民の期待の声は大きい。
 計画に載せているというボウリング場も、苫小牧には既に5店舗がひしめいている。〝異常〟とも言える激戦区だ。
  市内で唯一、プロボウラーを2人抱える老舗ボウリング場、中央ボウル(同市本町2、中村裕信社長)も今後、市内すべてのボウリング場が生き残るとは思って いない。「でも、ボウリングは設備が新しいから行くのではない。ボールを投げる、そのものが楽しい競技。実際は生き残る道が十分にある」と希望はある。
  娯楽施設だけでなく、ここ数年の流通形態の激変は、同市内の食品加工など製造業者にも、激動の時代の到来を告げている。イオン、ジャスコ、マックスバリュ などイオングループが共通で店頭に並べる濃いピンク色のロゴが入ったプライベートブランド(PB)「トップバリュ」。豆腐やアイスクリームなど食品や飲 料、紙製品など日用品までさまざまな商品を展開し、大量仕入れ、大量販売で価格を抑える。
 PBと有名メーカーの商品があふれる店内に、地元の製 造業者の製品が参入していくことは、極めて難しい。全国レベルの品質と価格が求められ、絶対数が違う地方の業者には敷居が高過ぎるためだ。苫小牧商工会議 所は「イオンとの取り引きは極めて難しいだろう。(イオンが)求めるレベルが高く、たとえ取引できても、利益が上がらない状態になるのでは」とみる。
  既に前例はある。イオングループのマックスバリュ北海道(本社札幌市)が、当時の王子サービスセンター(本社苫小牧市)から店舗部門を譲り受けた際、当初 は商品を卸している地元業者などと取引を続けた。だが、徐々に取引継続の基準などが厳しくなり、製造業者の撤退や納入業者の売り上げ激減という経緯があ る。消費者の前に商品を出す機会が減れば、生産活動そのものすら危うくなってくる。
 橋本智子苫小牧消費者協会会長は「消費者にとって、選択の幅が広がることは喜ばしい」としながらも、「地元で作ったものを店で買えなくなるとしたら、長期的に〝地産地消〟を考えると、どうなのか。消費者の不利益にならないのか、考えあぐねている」と複雑な心中を語る。
苫小牧民報社
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 今回は苫小牧にあった王子サービスセンターという食品ストアを取り上げる。
  この会社は名前から連想できるように、王子製紙グループである。だが、経営不振でマックスバリュ北海道(旧札幌フードセンター)に売却された。最初は地元 との取引はあったが、イオンによる集中型取引で買い叩かれたり、配送が困難になった結果、取引は縮減されている。その結果が、2005年に苫小牧にあった 納豆製造業・三福荒木食品工業(株)の自己破産申請である。負債約2億4000万円。ピーク時の93年6月期には7億円強の売り上げ。それが2004年に は2億6千万まで落ち込み、資金繰りは悪化したそうだ。
 大企業だけが利益を集中させ、中小企業には屑しか宛てがわないいまの経済システムは果たしてフェアと言えるのか。あくまでも企業は利益を稼いで当然だが、得た利益にはそれなりの社会貢献が要求されているのだ。それは稼いだだけの税負担であり、雇用創出義務である。
 グローバル10の名目で、人権を踏みにじるやり方は果たして正しい利益と言えるのか。イオンは私達の問い掛けに逃げないで応えてほしい。


 今回のコラムは以下のサイトから参考にしました。
http://www.tomamin.co.jp/kikaku/04/aeon/aeon0316.htm